免疫組織データベース~いむーの



ALK

2005年6月3日

別名などAnaplastic Lymphoma Kinase

メーカー:ロシュ・ダイアグノスティックス(株)(商品コード:518‐113735)

クローンD5F3 (ラビットモノクローナル抗体)

希釈倍率希釈済み

抗体反応時間16分間/37℃

検出試薬ベンタナ OptiView DAB ユニバーサルキット + ベンタナ OptiView 増感試薬

抗原賦活化CC1 92min

推奨陽性コントロール: 虫垂、ALK陽性肺癌

染色パターン細胞質

(上記はベンタナ ベンチマーク ULTRAでの条件。抗体は必ずしも全てのメーカーを比較して選択しているわけではありませんので、必ずしも“推奨メーカー”という意味ではありません。)

※他クローンは後日追記

反応性: analplastic lymphoma kinaseに反応。正常のリンパ球には染色されない。悪性リンパ腫では未分化大細胞型リンパ腫anaplastic large cell lymphoma (ALCL)と、Diffuse large B-cell lymphoma with expression of full-length ALKに陽性。

基礎:

ALK遺伝子は、受容体型チロシンキナーゼの一つであるanaplastic lymphoma kinaseをコードしており、未分化大細胞型リンパ腫においてNMP(Nucleophosmin)と融合する遺伝子として単離された1), 2)。2007年に肺癌においてEML-4(echinoderm microtubule-associated protein-like 4)と融合したEML4-ALK遺伝子が同定され、癌化に寄与することが報告された3)。現在ではEML4以外の融合パートナーも知られているが4)、肺癌ではEML4-ALKが最も多い。EML4ALKはそれぞれ第2染色体短腕上の近い位置に逆向きに位置しており、両方を含む領域が逆位を起こして再構築されることにより、融合遺伝子が生じる(図1)。その結果、EML4-ALK融合遺伝子は二量体形成に必要なcoiled-coil ドメインとチロシンキナーゼドメインを含んでいるため、恒常的に活性を持つことにより、癌化を引き起こす3)。

図1 EML4遺伝子とALK遺伝子の再構成模式図
(⽇本肺癌学会バイオマーカー委員会, 肺癌患者におけるALK融合遺伝⼦検査の⼿引きより引用)

図2 肺腺癌における各ドライバー遺伝子変異の頻度
(Saito M, et al. Cancer Sci. 2016 Jun;107(6):713-20. より引用)

用途:

a) anaplastic large cell lymphoma
60-85%に陽性で、cytoplasmic とnuclearに染まるパターンがある。t(2;5)/NPM-ALK translocationを示す症例のほとんどはcytoplasmic and nuclear の両方とも陽性となる。この陽性像はtranslocationのパターンによってはcytoplasmicのみ、あるいはnulearのみと変化する。(WHO Tumors of Haematopoietic and lymphoid tissues, 2001, p230-235)。ALK陽性ALCLは若年者に多く、治療によく反応し、5年生存率は90%(Shiota M et. al. Anaplastic large cell lymphomas expressing the novel chimeric protein p80NPM/ALK: a distinct clinicopathologic entity. Blood. 1995 Sep 1;86(5):1954-60, Nakamura S et.al Anaplastic large cell lymphoma: a distinct molecular pathologic entity: a reappraisal with special reference to p80(NPM/ALK) expression. Am J Surg Pathol. 1997 Dec;21(12):1420-32)。陰性例はheteroな集団と考えられる(森茂郎、中村栄男 未分化大細胞方リンパ腫 in菊池 昌弘、森茂郎 監修 最新・悪性リンパ腫アトラス 文光堂 p266-275)。ALCLでは必ずALKを染色すべきである。なお、cutaneous formのALCLは陰性である。

b) 炎症性筋線維芽細胞性腫腫inflammatory myofibroblastic tumor:IMT
(Griffin CA et.al. Recurrent involvement of 2p23 in inflammatory myofibroblastic tumors.Cancer Res. 1999 Jun 15;59(12):2776-80)に陽性が知られる。
その他の腫瘍にも陽性が知られ、例えばLi XQらの249例のsarcomaにおける検討においてはIMTs (4 of 4), rhabdomyosarcomas (4 of 7), various lipogenic tumors (35 of 65), Ewing’s sarcoma/peripheral primitive neuroectodermal tumors (6 of 10), malignant fibrous histiocytomas (8 of 37), leiomyosarcomas (3 of 18), and other non-IMT tumors (9 of 108)と、IMTよりも弱いながら、様々な腫瘍に陽性像がみられたという(Li XQ, Hisaoka M, Shi DR, Zhu XZ, Hashimoto H. Hum Pathol. 2004 Jun;35(6):711-21. Expression of anaplastic lymphoma kinase in soft tissue tumors: an immunohistochemical and molecular study of 249 cases).

c) 非小細胞肺癌における、ALK阻害剤投与のための患者選別

日本人では非小細胞肺癌の2-5%程度がALK融合遺伝子陽性であるといわれており5) 、EGFRROS1など、他のドライバー遺伝子変異とは基本的には相互排他的であることが知られている6) 。

ALK肺癌の臨床的な特徴としては、非/軽度喫煙者に多く、若年性であること、また、病理学的な特徴としては、篩状構造の組織像や印環細胞の出現、TTF-1陽性例に多いこと、などが報告されているが7), 8) 、このような特徴をもたないALK肺癌も存在するため、臨床背景や組織型のみで判断すべきではない。

2012年に承認されたクリゾチニブをはじめとするALK阻害剤を投与する際には、投与前にALK陽性であることを確認する必要があり、コンパニオン診断薬として免疫染色やFISH法、NGS法が承認されている。肺癌診療ガイドラインにおいても非扁平上皮癌に対してはALK検査を実施することが推奨されている。(生検検体などの微量な検体では組織型の鑑別精度が高くない場合があるため、非扁平上皮癌に限らず検査すべきとされている。)
各ALK阻害剤に対して使用可能なコンパニオン診断薬については、製薬メーカーおよび診断薬メーカーの添付文書などを確認すること。

未分化大細胞型リンパ腫(ALCL)ではAlk-01などの抗体が使用されているが、肺癌のALK融合タンパク質はALCLに比べて発現が微量であることが知られており、Alk-01および一般的な感度の検出キットでは検出が困難である。そのため、ALK融合タンパク質の検出に適したクローンの選択と高感度の検出キットが必要となる9)。

非小細胞肺癌におけるALK融合タンパクの発現は、基本的には均一であることが多いが、一部、不均一(Heterogeneity)な染まりを呈する腫瘍もある。

また、免疫染色では神経系の細胞などに存在する全長ALKも陽性となるため、神経内分泌腫瘍などは強陽性に染まることから、注意が必要である。


図3  ALK陽性肺腺癌症


図4ALK陽性肺腺癌症例(Heterogeneity)

文献

1.Morris S. W, et al. Fusion of a kinase gene, ALK, to a nucleolar protein gene, NPM, in non-Hodgkin’s lymphoma. Science. 1994 263, 1281–1284.

2.Shiota M, et al. Hyperphosphorylation of a novel 80 kDa protein-tyrosine kinase similar to Ltk in a human Ki-1 lymphoma cell line, AMS3. Oncogene 1994 9, 1567–1574.

3.Soda M, et al. Identification of the transforming EML4-ALK fusion gene in non-small-cell lung cancer. Nature. 2007 Aug 2;448(7153):561-6.

4.Takeuchi K, et al. KIF5B-ALK, a Novel Fusion Oncokinase Identified by an Immunohistochemistry-based Diagnostic System for ALK-positive Lung Cancer. Clin Cancer Res. 2009;15(9), 3143-9

5.Saito M, et al. Gene aberrations for precision medicine against lung adenocarcinoma. Cancer Sci. 2016 Jun;107(6):713-20.

6.Webb TR, et al. Anaplastic lymphoma kinase: role in cancer pathogenesis and small-molecule inhibitor development for therapy. Expert Rev Anticancer Ther. 2009 Mar;9(3):331-56.

7.Rodig SJ, et al. Unique clinicopathologic features characterize ALK-rearranged lung adenocarcinoma in the western population. Clin Cancer Res. 2009 Aug 15;15(16):5216-23.

8.Inamura K, et al. EML4-ALK lung cancers are characterized by rare other mutations, a TTF-1 cell lineage, an acinar histology, and young onset. Mod Pathol. 2009 Apr;22(4):508-15.

9.Mino-Kenudson M, et al. A novel, highly sensitive antibody allows for the routine detection of ALK-rearranged lung adenocarcinomas by standard immunohistochemistry. Clin Cancer Res. 2010 Mar 1;16(5):1561-71

執筆日:2005/06/03→2021/6/28補記

執筆者:神戸大学病院病理部病理診断科 伊藤 智雄  tomitoh@med.kobe-u.ac.jp

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