S100
抗体名: S100 (polyclonal)
推奨陽性コントロール: spring roll.
染色パターン:核と細胞質
S100蛋白は「中性硫酸アンモニウムsaturated ammonium sulfateに100%溶解する(soluble)」がその名の由来である。最初は牛の脳から分離されたものであり、病理診断の世界ではpolyclonal抗体を主に使用し、漠然とS100ファミリー全体に対して呼称しているが、現在は20種類以上の機能の異なるサブファミリーが存在していることがわかっている。例えば、神経マーカーとしてのS100であればS100Bがそれに相当する。近年では各サブファミリーに対応する抗体が様々な目的で使用されてきている。
この項は、従来から用いられている「抗S100 polyclonal抗体」に対しての解説である。
以下、札幌医科大学医学部病理診断学 長谷川 匡先生 (小改変あり)
陽性となる細胞:シュワン細胞, 軟骨細胞, 脂肪細胞, 色素細胞, ランゲルハンス細胞, マクロファージ, 筋上皮細胞とそれらの腫瘍など
悪性末梢神経鞘腫瘍 malignant peripheral nerve sheath tumor (MPNST):紡錘形細胞が血管周囲に渦巻き状、柵状に配列する
↓
紡錘形細胞の細胞質と核にS-100蛋白が陽性 (ただしMPNSTは陰性の事も多いので注意。Daimaruらの検討では約1/3が陰性)
※注意:S100は神経性腫瘍、悪性黒色腫、Langerhans cell histiocytosisの診断などに有用で広く用いられるが、特異度が低いことには注意が必要である。様々な癌腫も陽性であることが知られている (Leong’s manual of Diagnostic Antibodies for Immunohistology, 3rd ed)。(伊藤)
執筆日:2021/1/24 S100の説明、注意を追加
執筆者:札幌医科大学医学部病理診断学 長谷川 匡先生(本文)伊藤智雄 (追記)