皮膚原発Merkel cell carcinoma(メルケル細胞癌)と転移性小細胞癌の鑑別

皮膚原発のMerkel cell carcinoma(メルケル細胞癌)と転移性小細胞癌は、その細胞形態や組織像が類似しているため、HE染色標本では鑑別が困難なことが多い。

皮膚に原発するメルケル細胞癌はほとんどの例で、CK20陽性でTTF-1陰性である。 とくに、CK20が核近傍にドット状の陽性があり、ほとんどの腫瘍細胞が染色されていれば、まず、メルケル細胞癌と考えることができる。肺の小細胞癌でもCK20が一部の細胞に陽性に染色されることがあるが、腫瘍細胞の25%以下である¹。

TTF-1は、メルケル細胞癌では陰性であり、たいていの肺原発の小細胞癌で陽性になる。メルケル細胞癌では、細胞質が弱く染色されることがあるが、肺の小細胞癌でみられるような核の陽性所見は得られない。TTF-1は、肺以外が原発の小細胞癌では陰性のことが多いが、肺原発の小細胞癌でも陰性例があり、TTF-1陰性所見ではメルケル細胞癌と診断することはできないが、陽性であれば転移性の小細胞癌と考えることができる。

1. Hanly AJ, Elgart GW, Jorda M, Smith J, Nadji M. Analysis of thyroid transcription factor-1 and cytokeratin 20 separates merkel cell carcinoma from small cell carcinoma of lung. J Cutan Pathol. 2000 Mar;27(3):118-20.

2. Leech SN, Kolar AJ, Barrett PD, Sinclair SA, Leonard N.   Merkel cell carcinoma can be distinguished from metastatic small cell carcinoma using antibodies to cytokeratin 20 and thyroid transcription factor 1. J Clin Pathol. 2001 Sep;54(9):727-9.

3. Cheuk W, Kwan MY, Suster S, Chan JK.  Immunostaining for thyroid transcription factor 1 and cytokeratin 20 aids the distinction of small cell carcinoma from Merkel cell carcinoma, but not pulmonary from extrapulmonary small cell carcinomas. Arch Pathol Lab Med. 2001 Feb;125(2):228-31.

執筆日：2006/3/14

執筆者：札幌皮膚病理研究所 福本隆也 木村鉄宣