C4d
(もっとも信頼性が高いのは蛍光抗体法とされるが、近年パラフィンで染色可能な抗体が入手可能であり、十分に有用な結果がえられる)
クローン: rabbit polyclonal (Cat no: BI-RC4D)
メーカー:BIOMEDICA
抗原賦活化法:圧力鍋 *自動染色機ではなく、手染めで行っています。
(上記は一例。抗体は必ずしも全てのメーカーを比較して選択しているわけではありませんので、必ずしも”推奨メーカー”という意味ではありません。)
推奨陽性コントロール:糸球体のmesangium
補体活性化経路の古典経路、またはレクチン経路の構成成分のひとつ。補体活性経路において、C4→C4a, C4bとなり、さらにC4b→C4c, C4dへと変換される。
移植腎における有用性
移植腎においてantibody-mediated rejectionの診断に用いられる。 本来、正常腎においては、C4dはメサンギウムと血管極に認められる。一方で、傍尿細管毛細血管(peritubular capillary ; PTC)や糸球体係蹄壁にC4dが沈着すると、抗体関連拒絶反応antibody-mediated rejectionが考えられる。
ただし、巣状に分布するC4dやびまん性にもかかわらず弱いC4d沈着の意義については未だ不明。また、抗体関連拒絶のない移植腎、拒絶反応もなく、まったく移植腎機能障害のないときにもC4dは陽性となることもあるので、C4d陽性すなわち抗体関連型拒絶反応ではないことは注意すべきである。
抗体関連型拒絶反応の診断基準 (Banff 97) (a) ドナーに対する抗体の存在 (b) 好中球・単球の傍尿細管毛細血管(PTC)内や糸球体毛細血管腔内への高度集積。好中球主体の間質浸潤細胞と尿細管炎はなし。 (c) PTCへのC4dのびまん性沈着。 |
参考:移植腎臨床病理アトラス
近年ではC4d陰性の抗体関連拒絶も注目されている。最新情報に留意してください。
移植肝における有用性
まだ、未確定の部分が多いが近年humoral rejectionとの関連性について以下のように報告があった。
判定 | 染色結果 |
positive | portal stromal staining |
indeteminate | endothelial staining only |
negative | no staining |
positiveの症例は有意に術後のA/B antibody(immunoglobulin M (IgM)) titersが高く、予後も不良であった。門脈の間質へのC4dのdepositは急性液性拒絶のhallmarkの可能性があり、また、その一部ではallograft damageが不可逆的となる可能性もあるとした。
Haga H, Egawa H, Fujimoto Y, Ueda M, Miyagawa-Hayashino A, Sakurai T, Okuno T, Koyanagi I, Takada Y, Manabe T. Acute humoral rejection and C4d immunostaining in ABO blood type-incompatible liver transplantation. Liver Transpl. 2006 Mar;12(3):457-64.
(肝臓での意義に関しては流動的ですので、最新情報に留意してください)
執筆日:2006/2/15→8/29腎改変、肝臓追加
執筆者:北海道大学病院病理部 久保田佳奈子(腎)、執筆者:神戸大学病院病理部病理診断科 伊藤 智雄 tomitoh@med.kobe-u.ac.jp 伊藤 智雄(肝)