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胸腺腫のWHO分類(WHO 2004) WHO classification of thymomas

2007年7月11日

分類の基本(WHO blue book p.152) ●二つのmajor typeがある ・Type A: 腫瘍性上皮細胞およびその核が紡錐形ないし卵円型で、均一、異型に乏しい ・Type B: 細胞が主に円形ないし多角形を示すもの ●Type B thymomaはリンパ球浸潤の量と腫瘍性上皮細胞の異型により、さらに3種類に分類される:B1  (最もリンパ球が多い)、B2, B3(最も上皮細胞が多い) ●type Aと、B1様や(稀に)B2様の像と混在する場合はtype ABとする ●Thymic carcinomaはその分化によって命名される(squmous cell, mucoepidermoid,  etc.)。1999年のWHOではWHO “type C thymoma” は見出し用語であったために、胸腺上皮由来に強制するきらいがあった。今回の分類では、germ  cell tumors以外のnon-organotypic malignant epithelial neoplasmsもthymic  carcinomaと呼ぶため、この用語は廃止された。 ●Combined thymomaはWHO histologyを明示し、それぞれのおおよそのパーセンテージを示す。 ●伝統的に、「悪性胸腺腫malignant rhymoma」という言葉は以下のようなものに用いられてきた:(i)   進行したステージの胸腺腫、すなわち腫瘍のhistologyに関係なく、局所浸潤、胸膜、あるいは心外膜へのimplantあるいは転移を示したもの、(ii)   腫瘍のステージに関係なく無く、強い異型を示す胸腺上皮性腫瘍(胸腺癌)。WHO  histologyに関係なくlocally invasive thymomaの同義語として使われる「悪性胸腺腫」という言葉は、advanced  stagesのtype AあるいはABのthymomaの良好な予後を正しく反映していないため、使わない方がよい。   なお、現在、本邦で取り扱い規約が編纂中である。 以下に胸腺腫のhistologyをまとめる。胸腺癌はWHOを参照して下さい。

Histologic type 主な特徴 代表的な組織写真 (B2以外は全て香港Queen Elizabeth HospitalのDr. John Chanのコレクションから撮影し、許可を頂いた上で掲載しています)
Type A (Medullary thymoma) 非常に大きなlobuleを作る。       異型に乏しい紡錐形細胞の増生が主体で、多彩な像を示す。        – fascicular  – storiform  – pericytomatous   – rosetteや腺管構造等を来すことあり。       核分裂は基本的に無く、あってもごく稀。 リンパ球はごく少数。       完全切除が得られれば再発はしない。 Aperi-spericytomatous Arosette-srosette Aglandular-sglandular
Type AB (mixed thymoma) AとBの混在(どちらかが25%以上)。       混在には2つのパターンがある  – AとBが別々に存在– AとBが密接に混在 clinically benignで、再発や転移は稀。 ABs左下がA右上がB
Type B1       (predominantly cortical thymoma) 線維性隔壁に隔てられた小葉構造。      非常に密なリンパ球浸潤の中に、不明瞭に円形、類円形の上皮細胞が混在各タイプの中で最も密なリンパ球浸潤を示す)。 上皮細胞の核小体は目立たない。ハッサル小体をみることあり。perivascular spaceをよくみる。 A, ABよりはややaggressiveだが、再発は10%以下。 B1s

線維性隔壁に隔てられたlobule。ハッサル小体もみられる。リンパ球は非常に密。

B1hs強拡大。上皮細胞は類円形。核小体は目立たない
Type B2       (cortical thymoma) 細い隔壁に隔てられた小葉構造。上皮細胞は大きく、polygonalとなり、paleな核の中に明瞭な核小体をみる。perivascular space周囲のpalisaded appearanceをみることあり。ハッサル小体をみることあり。B3との混在をみることがあるが、そのような場合にはcombined B2/B3 thymomaとする。 moderate malignancyで、しばしばinvasive。10%程度が転移を示す。 HE(1)x100弱拡大 HE(1)x200perivascular space HE(1)x400核小体の目立つ上皮細胞
B2の写真はいずれも市立函館病院中央検査部臨床病理科工藤和洋先生に御供与頂きました
Type B3       (well differentiated thymic carcinoma) 小葉構造を示す。   上皮細胞はpolygonalで上皮性の配列が明確となり、solidなシート状配列を示し、上皮内にリンパ球は乏しいperivascular space周囲やseptaに沿ったpalisaded appearanceをみることあり。核には切れ込み、核溝があり、核小体はB2よりも乏しい。少量の角化を見る場合あり。 intermediate malignancyで、ほぼ全てがinvasiveであり、しばしば局所再発を示す。 20%程度までの転移率を有す。 B3s B3palisadesperivascular space周囲のpalisading
Micronodular thymoma with lymphoid stroma リンパ球性のstromaに隔てられた多数のepithelial noduleを形成するもの。リンパ性間質はしばしばリンパ瀘胞を持つ。       上皮は異型に乏しく、卵円型から紡錐形の形態を示し、Type A thymomaに似る。 Micronodulars 
Metaplastic thymoma 吻合状の上皮と異型に乏しい紡錐形細胞の混在からなるもの  
Rare thymomas Microscopic thymoma       Sclerosing thymoma       Lipofibroadenoma  

執筆日:2007/7/11 執筆者:神戸大学病院病理部病理診断科 伊藤 智雄

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