免疫組織データベース~いむーの



Vimentin

2012年12月28日

Mouse monoclonal antibody

クローン:V9

メーカー:Dako (N1521)

希釈倍率:1:10

抗原賦活化:CC1、60分

推奨陽性コントロール:陽性陰性が明瞭に分かる組織。例えば、卵膜(脱落膜)、消化管粘膜、血管を含む線維性結合織。

染色パターン:細胞質

(上記は神戸大病理部での条件(Ventana BenchMarkXT)。抗体は必ずしも全てのメーカーを比較して選択しているわけではありませんので、必ずしも“推奨メーカー”という意味ではありません。)

 

中間径フィラメントは細胞骨格と呼ばれる細胞質内の蛋白質性の線維系のひとつで、細胞間でよく保存されている微小管やアクチン線維と異なり、相同性はあるが細胞の種類によって異なる蛋白質が発現するので、細胞分化のマーカーとしても用いられ、六つのクラスに分けられている。57 kDaのビメンチンは中間径フィラメントクラスIIIに属し、線維芽細胞、血管内皮細胞、平滑筋細胞、横紋筋細胞、骨・軟骨細胞、神経鞘細胞など、主に間葉系細胞に発現している。放射状グリア細胞、未熟なグリア細胞、膵臓の前駆細胞、アポトーシスのT細胞、好中球、活性化マクロファージ、血小板でも発現が確認されている。生体内で最も豊富に存在する細胞内構造蛋白でありながら、ビメンチンをノックアウトしても顕著な表現型は出ず、ビメンチンの詳細な細胞生理機能や病的過程での役割はいまだ謎に満ちている。

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(Vimentin染色。左上:脱落膜、右上:結腸粘膜、左下:血管を含む結合織)

 

用途:

悪性上皮性腫瘍である癌腫は一般にはサイトケラチンを発現し、間葉系のマーカーであるビメンチンは発現しない傾向があることを利用して、癌か肉腫かの鑑別に有用とされていた。しかし、癌肉腫も含め、癌腫の分化度が低くなるにつれて、サイトケラチンの発現は弱くなり、ビメンチンの発現が起こるようになり、また、非上皮性腫瘍であっても、一般に上皮性マーカーと呼ばれているサイトケラチンなどが発現することもあることが分かって来た。Vimentin染色が陽性だからといって病理診断上断定的なことが言えるわけではなく、用途は少なくなっている。

①腎明細胞癌と嫌色素性腎細胞癌を鑑別する免疫染色パネルの一つとしてあげられている。

組織型 CK7 RCC Ma CD10 Vimentin CD117 Parvalbumin E-cadherin
腎明細胞癌 陰性 陽性 陽性 陽性 陰性 陰性 陰性
嫌色素性腎細胞癌 陽性 陰性 陰性 陰性 陽性 陽性 陽性

出典:Zhou M, et al. The usefulness of immunohistochemical markers in the differential diagnosis of renal neoplasms. Clin Lab Med 2005;25:247-57.

 

②定型的な子宮体部あるいは頚部の類内膜腺癌はVimentin染色陽性、CEA染色陰性、p16染色陰性となる。また多くの例でER染色陽性、PgR染色陽性であり、これらは子宮頸部の内頸部型粘液性腺癌との鑑別に有用とされる。

出典:

・McCluggage WG, et al. p16 immunoreactivity may assist in the distinction between endometrial and endocervical adenocarcinoma. Int J Gynecol Pathol 2003;22:231-5.

・Stabler A, et al. Hormone receptor immunohistochemistry and human papillomavirus in situ hybridization are useful for distinguishing endocervical and endometrial adenocarcinoma. Am J Surg Pathol 2002;26:998-1006.

・Castrillon DH, et al. Distinction between endometrial and endocervical adenocarcinoma: an immunohistochemical study. Int J Gynecol Pathol 2001;21:4-10.

 

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(自験例(子宮癌肉腫)。左:H&E染色、右:Vimentin染色)

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(自験例(腎明細胞癌)。左:H&E染色、右:Vimentin染色)

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(自験例(子宮頸部。内頚部型粘液性腺癌との鑑別を要した類内膜腺癌)。左:H&E染色、右:Vimentin染色)

 

 

執筆日:2012/12/28

執筆者:神戸大学医学部附属病院病理診断科 酒井康裕、柳田絵美衣、今川奈央子

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