免疫組織データベース~いむーの



Tau

2013年1月31日

(PHF-tau,リン酸化タウ)

 

Mouse monoclonal antibody

クローン:AT8

メーカー:INNOGENETICS (code 90206), Thermo Scientific

希釈倍率:1:200

抗原賦活化:処理なし

推奨陽性コントロール:アルツハイマー病でみられる神経原線維変化(neurofibrillary tangle : NFT)、部位は海馬およびその周辺の側頭葉で出現頻度が高い。(NFT自体は、Bielschowsky、Gallyas- Braak、Bodian、メセナミン銀などの嗜銀染色で確認できるが、後2者では染色性はやや弱い。なお、Bodian染色の試薬は、現在販売中止となっている。)

(上記は淀川キリスト教病院での条件。抗体は必ずしも全てのメーカーを比較して選択しているわけではありませんので、必ずしも“推奨メーカー”という意味ではありません。)

 

タウとは、細胞質内の微小管に結合している蛋白で、生理的にリン酸化を受けているが、病的状態では、過剰リン酸化、異所性リン酸化を受け、さらにユビキチン化されて不溶化し蓄積すると考えられている。アルツハイマー病では、過剰リン酸化による非可逆的変化のNFTと老人斑の出現が組織学的特徴であり、その出現部位と程度により、進行度が判定1)される。特にNFTの出現頻度と認知機能はほぼ相関しており、認知症の解析には必須の項目である。AT8は検出感度が高く標準的な抗体であるが、外科材料や胎児脳では偽陽性となる可能性があり注意を要する。また、AT8免疫染色陽性、Gallyas- Braak染色陰性のものはpretangleとよばれ、超微形態的に線維形成していないものを指し、NFTの前病変と考えられている。また、大きく2種に分けられ、微小管結合部位数が3つの3リピート(3R)タウと4つの4リピート(4R)タウがある。それぞれ蓄積する疾患が異なり、特異抗体が市販されている。

 

用途:アルツハイマー病や一般的老化のNFT(3R+4R)、Pick病のPick嗜銀球(3R)、進行性核上性麻痺のtufted astrocyte(4R)、嗜銀顆粒性認知症の嗜銀顆粒(4R)、皮質基底核変性症のBallonned neuron(4R)

神経病理一般の解説: http://pd21.cihbs.niigata-u.ac.jp/menu.php

認知症の病理に関する解説:http://www.mci.gr.jp/BrainBank/Edu/09JADF_rev.pdf 1) 代表的な分類法:Braak分類(老人斑stage A-C、NFT stage Ⅰ-Ⅵ)

 

Bodian

G-B

Tau

(上:Bodian染色、中:Gallyas- Braak染色、下:タウ染色)

 

 

執筆日:2013/01/31

執筆者:淀川キリスト教病院病理診断科 上田佳世

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