免疫組織データベース~いむーの



p16

2013年7月8日

別名など:CDKN2A, p16INK4a

メーカー:ロシュ・ダイアグノスティックス(株)(商品コード:518‐109912)

クローンE6H4 (マウスモノクローナル抗体)

希釈倍率希釈済み

抗体反応時間12分間/36℃

検出試薬ベンタナ OptiView DAB ユニバーサルキット

抗原賦活化CC1 48min

推奨陽性コントロール: 正常膵組織、正常扁桃組織、子宮頸部扁平上皮癌組織

染色パターン細胞質および細胞核

(上記はベンタナ ベンチマーク ULTRAでの条件。抗体は必ずしも全てのメーカーを比較して選択しているわけではありませんので、必ずしも“推奨メーカー”という意味ではありません。)

p16INK4aはcell cycleのregulationにおいて中心的な役割を果たす癌抑制遺伝子である。サイクリンD/CDK4,6活性を特異的に阻害するインヒビター群の一つ。 網膜芽細胞腫タンパク(pRB)によってnegative feedbackを受けており、human papilloma virus(HPV)感染によってpRBの不活化あるいはmutationがおこると、p16INK4aのoverexpressionがおき、CDK4, CDK6のdysregulationに至る。

用途

①子宮頸部扁平上皮内病変の評価

WHO分類 第4版 (2014)ではLASTリコメンデーションの内容について触れており、高度扁平上皮内病変の評価においてH&E標本に加えてp16 IHC標本の併用による有用性について記載されている。1
また、子宮頸部扁平上皮内病変におけるCIN2以上病変の検出感度向上、偽陰性低減、複数評価者間の一致率向上などの有効性についても報告がある2(表1)

②中咽頭腫瘍の予後予測マーカー

中咽頭領域におけるHPV由来扁平上皮癌は放射性感受性が高く、予後が良好であることが知られている。TNM分類 第8版(2016)ではHPVの関連がんの鑑別としてp16 IHCによる評価が取り入れられている。3

③脂肪肉腫(ALT/WDLPS)の鑑別診断

Heらの報告ではALT/WDLPSの25/30 (83.3%)が陽性で deep-seated lipomas18例では陽性例は得られなかったとされている4。. Thway KらもMDM2. CDK4と比較しても感度・特異度が優れ、CDK4 and p16の組み合わせがbestであったとしている5。

※myxoid liposarcomaは生物学的に別の腫瘍であり、p16は有用ではない。

LASTリコメンデーション p16免疫組織化学染色の実施が推奨されるケース
H&E標本でHSILと紛らわしいもの
未熟扁平上皮化生
萎縮
その他
H&E標本でCIN2を疑うもの
H&E標本でCIN1を疑うが、細胞診で以下の結果を伴うもの
ASC-US/HPV16陽性
HSIL
ASC-H
AGC(NOS)


図1 正常子宮頸部における疎らな染色パターン


図2 p16過剰発現を示すびまん性の染色パターン

p16は正常でも発現しており、子宮頸部標本では扁平上皮化生細胞などで、しばしば疎らな染色を認める(図1)。一方、p16の過剰発現では、基底層あるいは傍基底層から中層あるいは表層にかけて連続的かつびまん性に染色性が認められる(図2)。

p16は正常でも発現しており、子宮頸部標本では扁平上皮化生細胞などで、しばしば疎らな染色を認める(図1)。一方、p16の過剰発現では、基底層あるいは傍基底層から中層あるいは表層にかけて連続的かつびまん性に染色性が認められる。

執筆日:2005/06/30 10/2加筆 06/03/27再加筆 12/10/24脂肪肉腫加筆 7/8内容追加
2021/6/28大改訂

執筆者:神戸大学病院病理部病理診断科 伊藤 智雄  tomitoh@med.kobe-u.ac.jp

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