免疫組織データベース~いむーの



HIK1083

2013年10月24日

Mouse, monoclonal

クローン: HIK1083

メーカー:関東化学株式会社 (胃型ムチンキット「シカHIK胃型ムチン」の「HIK1083ラテックス(HIK1083感作ラテックス+アジ化ナトリウム)」を使用)

希釈倍率:1:100

抗原賦活化: ER2 (pH9.0 EDTA buffer), 20分

推奨陽性コントロール: 胃幽門腺

染色パターン: 細胞質

(上記は神戸大病理部での条件(Leica BOND-MAXTM)。抗体は必ずしも全てのメーカーを比較して選択しているわけではありませんので、推奨メーカーという意味ではありません。)

 

HIK1083は1996年にIshiharaらが樹立した、ラットの胃固有腺の粘液を同定するモノクローナル抗体である。胃固有腺(噴門腺、胃底腺、幽門腺)は陽性を示すが、胃腺窩上皮には陰性である。子宮頸部の良性病変である葉状頸管腺過形成(LEGH)や最小偏倚腺癌が細胞質内に胃型の粘液を有することが知られ、その診断的難しさから、胃型粘液を証明する抗体のひとつとして有用性が高まっている。

 

用途:

胃型粘液の同定

LEGH, 最小偏倚腺癌をはじめとする胃型腺癌は細胞質にHIK1083, MUC6陽性を示し、胃型の粘液が証明される。

1) LEGH

最小偏倚腺癌と鑑別を要する良性過形成性病変の一つである。軽度のものは日常的に目にすることのある変化であるが、びまん性の病態では患者は水溶性帯下を訴え、臨床症状も最小偏倚腺癌に類似している。LEGHを背景として起こる胃型腺癌の報告がある。

 

2) 最小偏倚腺癌を含む子宮頸部胃型腺癌

胃型の粘液を有する頸部腺癌は最小偏倚腺癌でまず報告されたことから、当初胃型の粘液の同定が最小偏倚腺癌の診断に役立つ所見として注目された。現在ではHPV非関連腺癌のカテゴリーのひとつとしての胃型腺癌の概念が確立しつつあり、改訂WHO分類には新たな項目として追加される見込みである。この枠組みのなかでは、最小偏倚腺癌は超高分化型の胃型腺癌として位置づけられる。胃型腺癌は豊富な細胞質内粘液による、淡明で豊かな細胞質を有し、細胞境界が明瞭という組織学的な特徴を有する。通常型頸部腺癌に比して有意に無病生存率、全生存率が低下する予後不良な子宮頸癌とされている。

 

出典:

Ishihara K et al. Peripheral alpha-linked N-acetylglucosamine on the carbohydrate moiety of mucin derived from mammalian gastric gland mucous cells: epitope recognized by a newly characterized monoclonal antibody. Biochem. J 1996; 318: 409-416

Mikami Y et al. Florid endocervical glandular hyperplasia with intestinal and pyloric gland metaplasia: worrisome benign mimic of “adenoma malignum”. Gynecol Oncol 1999; 74: 504–511

Kojima A et al. Gastric morphology and immunophenotype predict poor outcome in mucinous adenocarcinoma of the uterine cervix. Am J Surg Pathol 2007; 31: 664-672

 

写真:

葉状頸管腺過形成(LEGH)

LEGH-HIK

胃型頸部腺癌

gastric Adcgastric Adc-HIK

 

 

執筆日:2013/10/24

執筆者:神戸大学医学部附属病院病理診断科 川上史、柳田絵美衣、今川奈央子

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