免疫組織データベース~いむーの



H3K27me3

2016年2月4日

Rabbit monoclonal antibody

クローン:C36B11

メーカー:Cell Signaling Technology

希釈倍率:1:200

抗原不活化:圧力鍋

(上記は一例に過ぎません。抗体は必ずしも全てのメーカーを比較して選択しているわけではありませんので、必ずしも”推奨メーカー”という意味ではありません。)

推奨陽性コントロール:血管内皮細胞、リンパ球など

染色パターン:核

 

H3K27me3とはヒストンH3の27番目のリジン(K)残基がトリメチル化された状態を指し、様々な遺伝子発現の調節に関わる抑制性クロマチン修飾の一つであり、PRC2(polycomb repressive complex 2)というポリコム蛋白複合体(EED、SUZ12、EZH2などにより構成される)がH3K27のトリメチル化を行う。近年、悪性末梢神経鞘腫(MPNST)のゲノム解析により、約70-90%のMPNSTにおいて、 SUZ12EEDの機能喪失型のgenomic alterationが同定され(Lee W, et al. Nat Genet 2014;46:1227-1232, De Raedt T, et al. Nature 2014;514:247-251, Zhang M, et al. Nat Genet 2014;46:1170-1172)、結果的に生じるH3K27me3のlossを免疫組織学的に捉えることが、MPNSTの診断の一助になる可能性が報告されつつある。

 

用途:MPNSTの診断補助に有用

Inga-Marie Sらの報告では51%のMPNSTにおいてH3K27me3は陰性で、特に High grade MPNSTの83%(25/30)・放射線療法後に生じるMPNSTは100%(10/10)陰性であったと報告しており、他の鑑別を要するspindle sarcoma(放射線療法後のunclassified sarcomaを除く)では全例陽性であったこと(Mod Pathol 2016;29:4-13)、またCarlos Nらも同様の検討を行い、45%(15/33)のMPNSTで完全陰性であり、孤発性MPNSTでは90%(16/18)で、放射線療法後MPNSTは91%(11/12)で陰性で、かつ他の鑑別を要する軟部肉腫では陰性例はなかったことを報告している(Am J Surg Pathol 2015 Dec 5, PMID:26645727)。

 

写真 ①悪性末梢神経鞘腫(自験例:左HE、右H3K27me3) 陰性症例

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②線維肉腫(自験例:左HE、右H3K27me3) 核が陽性となる

34

③未分化多形肉腫(自験例:左HE、右H3K27me3) 核が陽性となる

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執筆日:2016/02/04

執筆者:神戸大学医学部附属病院病理診断科 小松正人

 

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