CD10
(J5, CALLA, VIL-A1, 56C6)
クローン: 56C6 monoclonal (Ventana)
抗原賦活化法:圧力鍋 Ventana amplification併用
(上記は一例に過ぎません。抗体は必ずしも全てのメーカーを比較して選択しているわけではありませんので、必ずしも”推奨メーカー”という意味ではありません。)
推奨陽性コントロール:扁桃、虫垂などのリンパ瀘胞胚中心。腸管上皮細胞なども陽性。
染色パターン: 細胞膜
染色性および用途 CD10(Gene=3q25,AA749,糖鎖を含み90-110kDaと分子量には幅がある)はEnkephalin、Substance Pなどの炎症物質を分解する亜鉛結合酵素(EC3.4.24.11)であり Neutral endopeptidase(NEP)、Neprilysin、Enkephalinaseとも呼ばれ、 リンパ濾胞内のB細胞、好中球のほか、腎尿細管、気管支、小腸粘膜等の上皮細胞表面にも発現するII型膜貫通蛋白。(協同病理による補記)
1)胚中心のリンパ球; precursor lymphoid cells; 顆粒球 (John KC Chan. Tumors in lymphoretiucular system in Flercher et al. Diagnostic histopathology of tumors p1106)
2)一部の上皮細胞(特に乳腺筋上皮、胆管および毛細胆管、腎尿細管上皮、腸管上皮など)
3)乳腺間質の線維芽細胞
4)内膜間質:上皮細胞のはっきりしないendometriosisの確定にも有用である。
5)mesonephric lesions in the female genital tract
腫瘍
瀘胞性リンパ腫(follicular lymphoma):約80%に陽性。特に瀘胞間領域のびまん性陽性像は診断的価値が高い。ただし、胚中心外にリンパ腫細胞が進出した場合、CD10のdown regulationが起こることも多い。またhigh gradeの濾胞性リンパ腫では陰性となりやすいので注意。
バーキットリンパ腫Burkitt lymphoma
Bリンパ芽球性リンパ腫/白血病 B-lymphoblastic lymphoma
一部のT細胞リンパ腫、特にangioimmunoblastic lymphomaなど。
びまん性大細胞型リンパ腫の一部(DLBLの細分類を参照)
さまざまな非血液性腫瘍 特にendometrial stromal sarcomaやrenal cell carcinoma(Chu P, Arber DA. Paraffin-section detection of CD10 in 505 nonhematopoietic neoplasms. Frequent expression in renal cell carcinoma and endometrial stromal sarcoma.Am J Clin Pathol. 2000 Mar;113(3):374-82)
内膜間質に陽性であることを利用して、内膜癌の浸潤の有無に有用とも思われるが、実際には筋層浸潤であるのかadenomyosisのinvolvementであるのかの区別にはCD10は有用でないと報告された(筋層浸潤においても癌胞巣周囲にCD10陽性細胞がとりまくため) (Srodon M, Klein WM, Kurman RJ. CD10 imunostaining does not distinguish endometrial carcinoma invading myometrium from carcinoma involving adenomyosis.Am J Surg Pathol. 2003 Jun;27(6):786-9)
(以下、協同病理による補記)
小腸では図のように上皮刷子縁に明瞭に反応するが、下表に示すように抗ムチン抗体と併用して胃癌の胃型/腸型の分類にも利用される。 なお、我々はclone:56C6を400倍希釈・4℃オーバーナイトで使用し、ホルマリン固定組織標本では前処理としてpH6.0クエン酸緩衝液に浸漬し、オートクレーブで121℃,15分の熱処理を行っている。
(ここまで協同病理)
胚中心の陽性像(北大 2006.11.28差し替え)
執筆日:2005/06/16→2006/11/28 協同病理より補記をいただきました。2023.8.8追記および修復。
執筆者:神戸大学病院病理部病理診断科 伊藤 智雄 tomitoh@med.kobe-u.ac.jp (株)協同病理http://www.kbkb.jp/index.html