抗体データベース

SMARCB1/INI1 (BAF47/hSNF5)

クローン: 25/BAF47 (Mouse monoclonal)
メーカー:BD Biosciences (612110)
希釈倍率:x300 、
抗原賦活化法:HIER
(上記は一例に過ぎません。抗体は必ずしも全てのメーカーを比較して選択しているわけではありませんので、必ずしも”推奨メーカー”という意味ではありません。)

推奨陽性コントロール:internal controlとしてはリンパ球、血管内皮細胞。腫瘍としてはPNETなど。
染色パターン:  

下記の通り、様々な腫瘍での欠損が知られるようになり、高悪性度、rhabdoidな形態など共通した特徴を有することがわかり、「SMARCB1 欠失腫瘍」としての枠組みができるようになった。

※以前この項目はBAF47との項目がトップでしたが、SMARCB1の方が重要になりつつあり、こちらをトップにしました。抗体リストの中での順番が変わっています。

SMARCB1/INI1 geneは22q11.2に存在する遺伝子であり、基本的にはすべての正常細胞や腫瘍での発現が認められる。ただし、AT/RTおよび腎のmalignant rhabdoid tumorでは同部位の遺伝子が欠損、もしくはmutationしているため、この遺伝子産物である蛋白が作られず、陰性となる。
SMARCB1/INI1は基本的にはすべての細胞で陽性を示すのでかならず、血管内皮やリンパ球などでinternal controlの陽性像を確かめることが重要。

どのようなときに染めるか
小児脳腫瘍において比較的豊富な好酸性胞体を有する細胞が認められる時。腎臓でmalignant rhabdoid tumorが疑われるとき。

Atypical teratoid/rhabdoid tumor (AT/RT): 小児に発生する中枢神経腫瘍で、好酸性胞体を有するrhabdoid cellsから構成される腫瘍で、PNETに類似した像、上皮様形態、肉腫様形態を伴うときもある。希ながら成人にも発生例が報告されている。なお、腎のmalignant rhabdoid tumorとは同グループと考えられている。
rhabdoid cellsはほぼ全例でEMAとvimentinが陽性。SMAは全例には陽性とならない。GFAP, NFP, keratinを発現する場合もある。desminやgerm cell markersは陰性。(WHO blue book p145-148)。

1)Immunohistochemical analysis of hSNF5/INI1 in pediatric CNS neoplasms. Judkins AR, et al. Am J Surg Pathol. 2004 ;28:644-50.
2)Molecular analysis of the rhabdoid predisposition syndrome in a child: a novel germline hSNF5/INI1 mutation and absence of c-myc amplification. Fujisawa H, et al. J Neurooncol. 2003 ;63:257-62
3)Immunohistochemical analysis of hSNF5/INI1 distinguishes renal and extra-renal malignant rhabdoid tumors from other pediatric soft tissuetumors. Hoot AC, Russo P, Judkins AR, Perlman EJ, Biegel JA. Am J Surg Pathol. 2004 Nov;28(11):1485-91.

SMARCB1/INI1免疫組織化学。medulloblastomaでは陽性(参考)

AT/RTの組織像

SMARCB1/INI1のlossがみられる

■Epithelioid sarcomaでも陰性となり、診断に有効である(Am J Surg Pathol. 2009 Apr;33(4):542-50)

totalで127/136 例(93%)が陰性となった。conventional(91%), proximal (95%), hybrid (100%)と、どのタイプでも同様。

他の検討した腫瘍ではepithelioid MPNST(50%),  myoepithelial carcinoma (9%)のみ陰性。

他は陽性(136 ES, including 64 conventional (distal) ES, 64 proximal-type ES, and 8 with hybrid features of conventional and proximal-type ES; 54 metastatic carcinomas (22 from lung, 6 breast, 6 stomach, 5 colorectum, 5 kidney, 5 prostate, 5 pancreas); 12 metastatic testicular embryonal carcinomas; 20 metastatic melanomas; 20 epithelioid mesotheliomas; 20 epithelioid angiosarcomas; 10 epithelioid hemangioendotheliomas; 24 epithelioid malignant peripheral nerve sheath tumors (MPNST); 22 myoepithelial carcinomas of soft tissue; 7 anaplastic large cell lymphomas; 5 histiocytic sarcomas)

■Poorly differentiated chordoma
Poorly differentiated chordoma、特に小児例でSMARCB1/INI1 lossと関連することが知られている(Neuro Oncol. 2014 Mar; 16(3): 372–381.

■Renal Medullary Carcinoma
アフリカに多い予後不良な腎腫瘍であるが、SMARCB1欠損に関連した腫瘍であることがわかっている。
Int J Mol Sci. 2022 Jul; 23(13): 7097.

■SWI / SNF complex deficient sinonasal carcinoma
低分化な形態を示すaggressiveな腫瘍の一群で、basaloidないしplasmacytoid/rhabdoidな形態を示す。扁平上皮分化は欠如する。

執筆日:2006/2/15→3/24腎malignant rhabdoid tumorの記載を追加。

→2009.6.1 epithelioid sarcomaの記述を追加(伊藤智雄)→2024/10/07小修正

執筆者:北海道大学病院 畑中佳奈子、神戸大学医学部附属病院 病理診断科 伊藤智雄