HNF4α
(Hepatocyte nuclear factor 4α)
抗体:Cell Signaling, C11F12(rabbit monoclonal antibody)
希釈倍率:1:25 (推奨濃度 1:100 – 1:400:神戸大では1次抗体反応時間が15分のため、推奨より濃い濃度となっています。)
1次抗体反応時間:15分
抗原賦活化:low pH (Bond, ER1) 10分
(上記は一例に過ぎません。抗体は必ずしも全てのメーカーを比較して選択しているわけではありませんので、必ずしも”推奨メーカー”という意味ではありません。)
推奨陽性コントロール:大腸
染色パターン:核
用途:胃腸上皮マーカー、肺腺癌における胃腸型形質の確認
HNF4αは消化管上皮(胃・小腸・大腸・肝臓など)で発現する転写マーカーであり、消化管の分化・成熟、代謝・機能の制御に重要な役割を果たす。消化管上皮由来マーカーとしても使用されるが、主に肺腺癌において、胃腸型形質を有するか否かの判断に用いることが一般的である。基本的に、TTF-1とHNF4αの発現は相互排他的であり(文献1)、HNF4α肺腺癌では、高頻度にTTF-1の不活性型変異、KRAS変異が認められ、EGFR変異, ALK転座, ROS転座などのドライバー異常は認められないことから、肺腺癌においては、HNF4αの発現有無はTTF-1と同等に重要である(文献2)。肺のinvasive mucinous adenocarcinoma(IMA)では90-100%に陽性となり、IMAのマーカーとして有名ではあるが、粘液を有する特殊型肺腺癌(膠様腺癌、腸型腺癌)だけでなく、通常型腺癌の一部にも陽性となる(文献2,3)。消化管上皮のみならず、膵臓・胆道腺癌でも高率陽性となるため、臓器特異性は低いことに留意する。
写真 肺invasive mucinous adenocarcinoma (自験例)
(左)HNF4αが腫瘍細胞の核に陽性 (右) TTF-1は腫瘍細胞に陰性
文献1: Kunii et al. Histopathology 2011;58:467-476
文献2: Matsubara et al. Cancer Sci 2017;108:1888-1896
文献3: Sugano et al. Am J Surg Pathol. 2013;37:211-218
執筆日:2021/9/27
執筆者:神戸大学医学部附属病院病理診断科 神保直江