抗体データベース

EpCAM (Ber-EP4)

(Epithelial cell adhesion molecule,CD326)

抗体:Mouse monoclonal, Ber-EP4, DAKO (N1554)
メーカー:DAKO (N1554)
希釈倍率:1:2
抗原賦活化:Enzyme、8分
推奨陽性コントロール:腸粘膜
染色パターン:細胞膜、細胞質

(上記は神戸大病理部での条件(Ventana BenchMarkXT)。抗体は必ずしも全てのメーカーを比較して選択しているわけではありませんので、必ずしも“推奨メーカー”という意味ではありません。)

Ber-EP4 (EpCam)は上皮におけるCa2+非依存性相同細胞接着を取り次ぐ、グリコシル化したI型膜貫通糖蛋白である。病理診断上、有名なクローンBer-EP4は、MCF-7乳癌セルライン由来で、34kDaと39kDaの二つの糖蛋白質を認識する。他の一般的な上皮組織抗原を認識する抗体に比べ、中皮細胞や間葉系細胞、神経堤由来の細胞、筋細胞、リンパ組織との交差性はない。反応性中皮や嗅神経、肝炎や肝硬変の肝細胞ではBer-EP4染色が陽性となることがある。上皮性悪性腫瘍(癌)においても広く陽性となる。-EP4染色。左上:細気管支、右上:回腸、左下:甲状腺、右下:唾液腺。)

用途:

病理診断上、癌腫と上皮型悪性中皮腫との免疫組織化学的鑑別で、癌腫マーカーとして利用されている。

特に2003年以降の悪性中皮腫に関するNelson G. Ordóñez (MD Anderson Cancer Center)の研究成果を中心としてまとめられた、2012年IMIGコンセンサスによると、上皮型胸膜悪性中皮腫と肺腺癌、肺扁平上皮癌、上皮型腹膜悪性中皮腫と漿液性腺癌、膵・胆道・胃腸の腺癌の鑑別において、Ber-EP4染色は有用な癌マーカーの一つとして紹介されている。但し、悪性中皮腫と癌の鑑別においては、先ずはそれぞれのマーカーから2つずつ染色することを推奨されており、単独で判断すべきではない。

文献:

Husain AN, Colby T, Ordonez, N, et al: Guidelines for pathologic diagnosis of malignant mesothelioma. 2012 update of the consensus statement from the international mesothelioma interest group. Arch Pathol Lab Med 137: 647-667, 2013

<上皮型胸膜悪性中皮腫と肺腺癌の鑑別>

抗体有用性染色部位陽性率[%]
上皮型中皮腫肺腺癌
上皮型中皮腫マーカー
 Calretinin核、細胞質100†5 ~ 10*
 Cytokeratin 5 or 5/6細胞質75 ~ 1002 ~ 20*
 WT-170 ~ 950
 D2-40 (podoplanin)細胞膜90 ~ 100~ 15*
肺腺癌マーカー
 MOC-31細胞膜2 ~ 10*95 ~ 100
 BG8 (LewisY)細胞膜3 ~ 7*90 ~ 100
 CEA (monoclonal)細胞膜、細胞質< 5*80 ~ 100
 B72.3細胞質極少75 ~ 85
 Ber-EP4細胞膜、細胞質~ 20*95 ~ 100
 TTF-1075 ~ 85
 Napsin A細胞質080 ~ 90
◎, たいへん有用; †, 強くびまん性; *, 局所的

<上皮型胸膜悪性中皮腫と肺扁平上皮癌の鑑別>

抗体有用性染色部位陽性率[%]
上皮型中皮腫肺扁平上皮癌
上皮型中皮腫マーカー
 WT-1~ 950
 Calretinin核、細胞質100†40*
 D2-40 (podoplanin)×細胞膜80 – 10050
 Cytokeratin 5 or 5/6×細胞質75 ~ 100100
肺扁平上皮癌マーカー
 p63又はp407*100†
 MOC-31細胞膜2 – 10*97 – 100
 BG8 (LewisY)細胞膜3 – 7*80
 Ber-EP4細胞膜、細胞質~ 20*85 – 100
 Cytokeratin 5 or 5/6×細胞質75 ~ 100100
◎, たいへん有用; ○, 有用; ×, 有用ではない; †, 強くびまん性; *, 局所的

<上皮型腹膜悪性中皮腫と漿液性腺癌、非婦人科腺癌(膵・胆道、胃腸)の鑑別>

抗体有用性染色部位陽性率[%]
上皮型中皮腫
中皮腫陽性マーカー
 Calretinin核、細胞質85 ~ 1000 ~38
 D2-40細胞膜93 ~ 9613 ~ 65
 CK5/6細胞質53 ~ 10022 ~ 35
 WT-143 ~ 9389 ~ 93
漿液性腺癌マーカー
 MOC31細胞膜598
 PAX80ほぼ100
 BG8細胞膜3 ~ 973
 Ber-EP4細胞膜、細胞質9 ~ 1383 ~ 100
 B72.3細胞質0 ~ 365 ~ 100
 CEA細胞膜、細胞質00 ~ 45
 ER0 ~ 893
 PR0< ER
非婦人科腺癌マーカー(膵・胆道、胃腸)
 Calretinin核、細胞質85 ~ 10010%(膵)
 WT-143 ~ 933(胃)、0(膵)
 D2-40細胞膜93 ~ 960(胃、膵)
 CK5/6細胞質53 ~ 10038(膵)
 MOC31細胞膜587
 BG8細胞膜3 ~ 989
 CEA細胞膜、細胞質081
 B72.3細胞質0 ~ 384(膵)、89(胆道)、98(結腸)
 Ber-EP4細胞膜、細胞質9 ~ 13> 98(胃、膵)
 CDX2090 ~ 100(結腸)、80(小腸)、70(胃)
◎, たいへん有用; ○, 有用; △, 時に有用; ☓, 有用ではない

執筆日:2013/12/16 2024/10/08修正

執筆者:神戸大学医学部附属病院病理診断科 酒井康裕(現:関西医科大学総合医療センター)、伊藤智雄