p57Kip2
クローン: 57P06; same as KP10
メーカー: NEOMARKERS
希釈倍率: x200
抗原賦活化法: 圧力鍋
(上記は一例に過ぎません。抗体は必ずしも全てのメーカーを比較して選択しているわけではありませんので、必ずしも”推奨メーカー”という意味ではありません。)
推奨陽性コントロール: 大腸癌、胎盤 (moleでもextravillous trophoblastsが内因性コントロールとなる)
染色パターン: 核
***ここまで北大病理部での条件***
cyclin-dependent kinase inhibitorであるp57Kip2をcodeする遺伝子はchromosome 11p15.5に存在し、paternally imprinted, maternally expressed geneであることがわかっている。
用途:
Complete moleの診断に有用である。
Complete moleは父親のalleleのみのdiploidで、p57Kip2を発現しない。正常のvilliと異なり、cytotrophoblastsと実質が陰性となる。extravillous trophoblastsは陽性となる(internal control)。
特に、非常に早期のCMはcisternの形成を欠き、trophoblastの増生もほとんどみられず、形態学的診断が極めて難しいため、この抗体を用いた免疫染色が有用である(Adv Anat Pathol. 2005 May;12(3):116-25.)
*Partial moleの診断には使えない
*コントロールが陽性となっていることを必ず確認すること(extravillous trophoblasts)
<参考>早期のmoleの診断の仕方 AJSP 30(3), 362-369 (2006.9.1 武田広子、伊藤智雄)
「moleでは血管が欠如する」といわれるが、実際には細かな血管を有する事が多く、血管の有無のみで診断することは危険である。また、早期ではcisternの形成もみられず、鑑別が難しい。早期のcomplete moleでは腔を有するような血管は減少し、迷路状のimmatureな血管がむしろ目立ってくる(CD31で明瞭化)。また、間質のapoptosisも多い。 p57は増殖、分化、apoptosisに関与しており、moleではp57の欠如によってapoptotic related moleculesの発現が亢進し、血管の形成不全やapoptosisの増加が起きている可能性がある。
normal: 絨毛のcytotrophoblastsと実質細胞が陽性である
complete mole: extravillous trophoblastsは陽性だが、絨毛のcytotrophoblasts及び実質細胞は陰性である。
執筆日:2005/11/4、2006/9/1追記
執筆者:神戸大学病院病理部病理診断科 伊藤 智雄、2006.9.1 武田広子、伊藤智雄)追記