免疫組織データベース~いむーの



人体および人体標本を用いた医学・歯学の教育と研究における倫理的問題に関する提言

2013年8月1日

Moral

医学・歯学の教育と研究において、人体および人体標本(遺体およびその一部である標本さらに手術による摘出標本を含む)を用いることは、人体の構造と機能、疾病の病理・病態を深く理解するために不可欠である。もとより遺体には尊厳があり、その使用にあたっては、死体解剖保存法によって、「死因解明」、「医学教育」、「医学研究」という公共の利益となる明確な目的をもつこと、および、遺体の取扱に当たっては礼意を失わないように注意しなければならないことが規定されている(死体解剖保存法第一条および第二十条)。

しかしながら、近年、カメラ機能付き多機能情報端末、ブログ、ツイッター、SNSの普及など個人によるネット向け情報発信の日常化を背景に、学習者によって、人体および人体標本が真摯な教育・研究以外の目的で撮影され、画像がインターネット上に流布される事例が散見されている。このような事例は、人体および人体標本に対する礼意を欠き、死体解剖保存法の精神から逸脱するものと強く批判されるべきものである。このような事態を放置しておくことは、医学・歯学の教育と研究における人体および人体標本の使用に対する社会の理解や協力を失い、医学・歯学の教育と研究に大きな支障を来すような事態を引き起こしかねない。さらに、人体および人体標本の提供者の個人情報の遺漏が伴うような事態となれば、その影響は計り知れないものと危惧する。

今般、日本解剖学会、日本病理学会、日本法医学会は、上記のような危機感を共有し、合同で医学・歯学の教育と研究を行っている大学、学部、教育・研究機関(以下大学等と略す)に対し以下の提言を行うこととした。また、医療系・生命科学系教育を行っている大学等に対しても下記の提言に準じた配慮を求めるものである。

 

提 言

1 大学等は、学習者に対して、人体および人体標本に接する前に、遺体やその一部である標本、手術による摘出標本等に対する礼意や倫理に関する教育、学習上知り得た個人情報などの秘密を守る義務(守秘義務)に関する教育、さらにネットリテラシー教育を行うこと。

2 大学等は、講義室・実習室において、学習者による人体および人体標本の撮影・録画・録音ならびにそのインターネット掲載の禁止を徹底させること。ヒト以外の動物や動物標本を用いる場合も、人体標本と混同されることを避けるという観点に加え、生命体への畏敬の念を育む意味でも撮影を禁止する。また、実物だけでなくスライドで供覧される標本写真等についても撮影ならびにインターネット掲載を禁ずること。

3 大学等は、人体や人体標本提供者の個人情報の管理を徹底し、学生に提供する情報は教育上必要と認められる最小限なものに限定すること。

 

以上

 

平成25年8月1日

一般社団法人日本解剖学会
理事長 河田 光博

一般社団法人日本病理学会
理事長 深山 正久

特定非営利活動法人日本法医学会
理事長 池田 典昭

ページの先頭へ