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Alveolar hydatid disease (エキノコックス症)の診断

2006年11月28日

主なエキノコックスには多包条虫Echinococcus multilocularis単包条虫Echinoccus granulosusの2種類が知られ、北海道のヒトでみられるものは前者の多包条虫Echinococcus multilocularisである。北海道ではキツネが終宿主、ネズミが中間宿主であるが、人間は中間宿主として誤って感染する。

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北海道においては(非常に小さなものなどの非典型例を除き)比較的容易に診断されているが、道外に置いてはその意外性から診断に難渋する可能性がある。

臨床所見としては石灰化を伴ったsolid and cytic lesionであることが特徴で、さらに血清診断によってほぼ確定される。(北大では播種などを防ぐため生検をすることはほとんどない)。 血清検査依頼先としては北海道立衛生研究所など。

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肉眼は壊死中に嚢胞が散在する像を呈する。嚢胞の量は様々。

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門脈枝への侵襲が著明な例。

組織学的にキーとなる所見は「クチクラ層」である。これをもってして確診となる(原頭節は診断には必須でない)。下のように、病変の最外層はリンパ球浸潤・好酸球浸潤で囲まれ、その内側に肉芽腫反応、さらに内部には壊死があり、その中にクチクラに囲まれた嚢胞が散在する。クチクラは好酸性層状の構造物であり、幼虫そのものである。本来はクチクラの内側にはgerminal layerがあるが、人ではほとんど見ることはない。

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クチクラ

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時に原頭節をみる(赤矢印)。また、繁殖胞につつまれていることを確認出来る場合もある(青矢印)。なお、これらは見る頻度が低く、診断に必須ではない。

検鏡のポイントは悪性腫瘍と同じであり、脈管侵襲、断端、リンパ節などへの転移の有無を検索する。

 

執筆日:2006/11/28

執筆者:神戸大学病院病理部病理診断科 伊藤 智雄  tomitoh@med.kobe-u.ac.jp

 

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