抗体データベース

INSM1

insulinoma-associated protein 1

抗体名:Santa cruz, sc-271408, anti-INSM1 antibody, A-8 
希釈倍率:×50
(上記は一例に過ぎません。抗体は必ずしも全てのメーカーを比較して選択しているわけではありませんので、必ずしも”推奨メーカー”という意味ではありません。)
抗原賦活化法:low pH 20 min 
推奨陽性コントロール: 膵臓ランゲルハンス島
染色パターン: 

新たに登場した神経内分泌マーカー。感度・特異度とも優れ、注目されている。

あらゆる神経内分泌腫瘍に染まる。1つの検討では、神経内分泌腫瘍102例中、100例に染まり(内訳:下垂体腺腫7例、甲状腺髄様癌7例、メルケル細胞癌7例、褐色細胞腫7例、膵内分泌腫瘍13例、消化管内分泌腫瘍31例、肺カルチノイド5例、LCNEC4例、肺小細胞癌19例、子宮小細胞癌2例)、H-score(陽性細胞率、染色強度を併せたスコア)はchromogranin A、synaptophysinを凌ぐ、と報告された1)。その後もchromogranin A、synaptophysinと比較する論文が多く見られ、それら2つのマーカーよりも感度、特異度ともに優れるという報告がある(頭頚部2)、胸腔3)、膵臓4))。従来より神経内分泌マーカーの一つとして用いられることが多かったCD56は特異度が低く、chromogranin A、synaptophysin, INSM1のパネルが推奨されるようになっている。

一方で、それらを凌ぐほどではない、とする報告もある(肺5))。扁平上皮癌、腺癌など非内分泌癌でも少数ながら陽性となる場合があり注意を要する。

陽性の域値も現在のところ統一した見解がない。びまん性陽性像をもって「陽性」と判断したいが、日常的にも、腫瘍によって染色強度、陽性細胞率に幅があり、どこから「陽性」とするのか、判断に迷う場面も多い。少しでも陽性細胞があれば「陽性」と判断する報告もあり(子宮6))、「陽性」の閾値も一定していない。

(神戸大学では特異度を重視し、びまん性の陽性をもって「陽性」と判断している)

1) Fujino et al. Int J Clin Exp Pathol 2017;10(5):5393-5405
2) Rooper et al. Am J Surg Pathol. 2018;42(5):665-671
3)Rooper et al. Am J Surg Pathol. 2017;41(11):1561-1569
4)Tanigawa et al. Med Mol Morphol. 2018;51(1):32-40
5)Mukhopadyay et al. Mod Pathol.2019:32(1):100-109.
6) Zou et al. Am J Surg Pathol. 2021:45(2):147-159.

執筆:2021年3月1日 神戸大学医学部附属病院 病理診断科 神澤真紀