Glut-1
抗体:Abcam, Anti-Glucose Transporter GLUT1 抗体 (ab15309)
希釈倍率:×200
推奨陽性コントロール:赤血球、神経周膜、扁平上皮
染色パターン:細胞膜、細胞質
(上記は神戸大病理部での条件(Leica BOND-MAXTM)。抗体は必ずしも全てのメーカーを比較して選択しているわけではありませんので、必ずしも“推奨メーカー”という意味ではありません。)
Glut-1は12回膜貫通型(N末端、C末端共に細胞質側)の膜蛋白ファミリーで、Solute carrier family 2(SLC2)とも呼ばれる。1p34.2のSLC2A1遺伝子にコードされた492aa、約54kDaの蛋白であり、グルコースに対して高親和性(Km 1~5mM)で、インスリンの有無に関わらず、血中グルコース分子を取り込む。赤血球、胎児組織、脳、腎、がん化組織など殆んどの組織に発現しているが、解糖系に依存する赤血球で最も高頻度に発現しており、赤血球の膜蛋白の5%を占める。Glut-1の細胞膜における密度は、グルコース濃度が下がると増加し、グルコース濃度があがると減少する。
用途:
①EMAやClaudin-1と共に、神経周膜細胞性マーカーとして利用される。
神経周膜細胞への分化を確認するために染色されるが、Perineurioma(神経周膜腫)やPerineurial MPNST(主に神経周膜細胞への分化を示す悪性末梢神経鞘腫瘍)の診断の一助となる。
②上皮型悪性中皮腫と反応性中皮の鑑別
Glut-1の発現が上皮型悪性中皮腫で高い陽性率を示し、反応性中皮細胞では発現が見られなかったとする報告があり、鑑別に応用可能である。
出典:Kato Y, et al. Immunohistochemical detection of GLUT-1 can discriminate between reactive mesothelium and malignant mesothelioma. Mod Pathol 2007;20:215-20.
③幼児期血管腫(Infantile hemangioma)の診断
幼児血管腫ではGLUT-1染色陽性が血管内皮に陽性であるのに対して、先天性血管腫(Congenital hemangioma)や血管奇形、膿原性肉芽腫、肉芽組織では陰性である。
出典:
1. North PE, et al. GLUT1: A newly discovered immunohistochemical marker for juvenile hemangiomas. Hum Pathol 2000;31:11-22.
2. North PE, et al. Congenital nonprogressive hemangioma: a distinct clinicopathologic entity unlike infantile hemangioma. Arch Dermatol 2001;137:1607-20.
執筆日:2013/01/15
執筆者:神戸大学医学部附属病院病理診断科 酒井康裕(現:関西医科大学総合医療センター)