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Glypican 3

抗体:Roche, anti-Glypican 3 (GC33) Mouse Monoclonal Primary Antibody

推奨陽性コントロール:肝細胞癌、胎盤
染色パターン:細胞膜、細胞質

Glypican-3はグリコシルフォスファチジルイノシトール(GPI)アンカーにより細胞膜に結合しているへパリン硫酸塩プロテオグリカンで、約60kDaの糖タンパクである。Simpson-Golabi-Behmel症候群(SGBS)において変異が見られる腫瘍胎児抗原として発見された。胎児の肝臓および胎盤に発現しているが、成人の肝臓には通常発現していない。一方で、肝細胞癌には陽性のため、肝細胞癌か良性結節かの鑑別目的でその有用性が指摘されている

Glypican-3遺伝子はXq26染色体上に位置し、その産物であるGlypican-3はWnt5a、fibroblast growth factor 2(FGF2)、bone morphogenic protein 7(BMP-7)などと相互作用し、細胞の成長を調節していると考えられている。

肝細胞癌全体での陽性率は70~90%でAFPよりも感度が高いとされている。肝硬変、形成異常小結節や再生性結節などで一部陽性となるという報告もあるが、肝細胞腺腫での陽性例は報告されておらず、肝細胞癌における特異性が高いとされている。 HepPar-1(Hepatocyte)も肝細胞癌の有用なマーカーであるが、正常ないし良性肝細胞でも陽性となることから、肝臓における良性病変と肝細胞癌との鑑別には用いることができない。

臓器特異性には注意が必要であり、yolk sac tumorや絨毛癌、黒色腫、一部の癌腫においても陽性となるとされる。(Debra LZ, et al. Glypican 3: A Novel Marker in Testicular Germ Cell Tumors. American Journal of Surgical Pathology. 2006; 30: 1570-1575、Sarit AR, et al. Glypican-3 is overexpressed in lung squamous cell carcinoma, but not in adenocarcinoma. Modern Pathology.  2008; 21: 817-825.)従って、肝細胞の良悪性を目的とし、lineage marker として用いるべきではないものと考える(この点はHepPar-1も同様である)。lineage markerとしてはArginase 1が推奨される。

肝細胞癌患者においては、血清中のGlypican-3濃度も高くなるとされており、肝細胞癌早期発見のマーカーとして有用であると考えられている。

最近ではGlypican-3を標的とした肝細胞癌の免疫療法の臨床試験が行われており、実現化が期待されている。

執筆日:2013/07/05
執筆者:兵庫県立尼崎病院 検査・放射線部(病理検査室) 松木 慎一郎