A型胃炎の生検診断
自己免疫性胃炎(A型胃炎)では生検による診断が多く行われる。その病態を理解し、正しい免疫組織学を用いて、病理診断を行わねばならない。
同疾患で傷害されるのは「胃底腺壁細胞」である。壁細胞はH&Eでは好酸性顆粒状に観察される胃酸を分泌する細胞である。これが自己免疫によって傷害され、胃酸分泌が低下する。胃酸低下は幽門線領域のガストリン酸性細胞を刺激し、過形成を来す。これらガストリンの過剰により胃体部にEnterochromaffin-like (ECL) cell hyperplasiaや NETが発生する。
生検診断のポイント
■胃底腺領域:
・偽幽門性化生、萎縮:胃底腺から採取されているのに壁細胞がみられず幽門腺様にみえないか。萎縮の程度。
・Enterochromaffin-like (ECL) cell hyperplasiaや NETの有無。場合によってchromogranin Aの免疫組織化学を施行。正常では陽性細胞は散在性少数である。自己免疫性胃炎ではEnterochromaffin-like (ECL) cell hyperplasia※やNETがみられる。
※Enterochromaffin-like (ECL) cell hyperplasiaとは
・正常腺管内に正常の2倍以上、あるいは散在性ではなく5個以上の連続性の陽性
・150μm以下の結節状の陽性(micronodular hyperplasia)。
病理所見の4段階
第1段階:形質細胞とリンパ球が粘膜固有層に不規則に浸潤し,粘膜固有層の肥厚を認める.
第2段階:形質細胞とリンパ球の粘膜固有層への浸潤が高度になり,萎縮した腺管の変性を認める.
第3段階:酸分泌粘膜の腸上皮化生あるいは偽幽門腺への変性を認める.
第4段階:酸分泌腺の著明あるいは完全な消失(酸分泌粘膜の萎縮)を認め,粘膜固有層は線維化や腸上皮・偽幽門腺化生に置き換わる.その他,enterochromaffin-like(ECL)細胞の過形成,炎症性あるいは過形成ポリープなどを認める.
(World J Gastroenterol 2015; 21: 12179-89、日本消化器内視鏡学会雑誌, 2018 年 60 巻 8 号 p. 1444-1449)
■幽門専領域:Gastrinの免疫組織化学を施行し、G細胞過形成の有無を判断。
<後日写真を追加します>
執筆日:2024/10/18
執筆者:神戸大学病院病理部病理診断科 伊藤 智雄