BAP1
(BRCA1 associated protein1)
抗体:SANTACRUZ, C-4(Mouse monoclonal antibody)
希釈倍率:1:100 (推奨濃度 1:50 – 1:500)
1次抗体反応時間:15分
抗原賦活化:high pH (Bond, ER2) 10分(古い症例は染色性が悪いことあり賦活化を上げる。いずれにしても必ずinternal controlの陽性像確認が必須!)
(上記は一例に過ぎません。抗体は必ずしも全てのメーカーを比較して選択しているわけではありませんので、必ずしも”推奨メーカー”という意味ではありません。)
推奨陽性コントロール:血管内皮細胞、リンパ球など
染色パターン:核
用途:中皮の良悪性判別
BAP1とは3p21に存在する癌抑制遺伝子で、悪性中皮腫の約60%でBAP1の変異あるいは欠失が見られる。免疫染色では、BAP1の核発現が欠失する。びまん性に核発現が欠失する症例が多いが、部分的に核発現が欠失する症例の報告もある。
悪性中皮腫であれば、胸膜・腹膜とも60%程度でBAP1の核欠失が見られるが、胸膜中皮腫では、上皮型(60-77%), 肉腫型(15-39%)と上皮型でのBAP1核欠失率が高い(文献1)。一方、多数の論文で、良性中皮のBAP1核欠失率は0%であったと報告されている。悪性黒色腫、胆管癌、腎癌などでも高率にBAP1核欠失が見られ、臓器特異性は高くないが、非小細胞癌や高悪性度漿液性癌では1-2%程度にしかBAP1核欠失が見られず(文献2,3)、鑑別疾患次第では、悪性中皮腫を示唆する根拠ともなり得る. 古い症例は染色性が悪いことあり、固定の影響を受けやすいことから、必ずinternal controlの陽性像を確認し、判定することが重要.
文献1: Churg and Naso. Am J Surg Pathol 2020; 44: e100-e112
文献2: Andrici et al. Hum Pathol. 2016;51:9-15
文献3: Owen et al. Hum Pathol. 2017;60:82-85
写真:悪性胸膜中皮腫(自験例) BAP1の核発現が欠失している. 必ず内因性コントロールの血管内皮やリンパ球が陽性であることを確認.
執筆日:2021/9/27
執筆者:神戸大学医学部附属病院病理診断科 神保直江