抗体データベース

Brachyury

抗体:1H9A2 (Mouse monoclonal antibody), Abcam (#ab140661)
希釈倍率:1:1500
抗原賦活化:ER2、10分
推奨陽性コントロール:脊索腫
染色パターン:

(上記は神戸大病理部での条件。抗体は必ずしも全てのメーカーを比較して選択しているわけではありませんので、必ずしも“推奨メーカー”という意味ではありません。)

BrachyuryはT遺伝子によってコード化された蛋白で、中胚葉の形成に関与する20以上の遺伝子が存在するT-box遺伝子複合体の転写因子である(第6染色体)。発生学的に主に脊索の発達を調整している。正常成人組織では発現していない。脊索腫細胞においてBrachyuryが活性化していることが見出されたが、Brachyuryの異常発現は余分な遺伝子コピーの存在と関係しているらしい。

用途:

脊索腫のマーカー。

脊索腫に対してBrachyuryの感度は高く、特異度は非常に優れている。脊索腫か、脊索腫様・軟骨様の組織像をとりうる腫瘍かの鑑別に役立つ。現在(2023年)では感度は80-90%の報告が多い。特異度が高いことは問題ない。

報告例:53例中全ての脊索腫にBrachyury染色は陽性であるが、以下の表の症例は全て陰性である。

腫瘍組織型分析症例数
軟骨様腫瘍軟骨芽細胞腫14
 軟骨粘液線維腫18
 軟骨肉腫(四肢)55
 軟骨肉腫(頭蓋底)9
 淡明細胞軟骨肉腫11
 脱分化型軟骨肉腫5
 骨外性粘液型軟骨肉腫5
 間葉性軟骨肉腫(骨)9
 粘液型軟骨肉腫8
 内軟骨腫12
 骨膜軟骨腫5
 滑膜軟骨腫症12
 小計163
その他下垂体腺腫6
 肥胖性星細胞腫2
 神経内分泌癌4
 腎癌6
 扁平上皮癌2
 上衣腫4
 粘液乳頭状上衣腫4
 巨細胞腫2
 膠芽腫5
 平滑筋肉腫6
 軟骨様脂肪腫2
 粘液型脂肪肉腫(grade2)6
 悪性黒色腫2
 リン酸塩尿症を伴う間葉系腫瘍2
 筋上皮性腫瘍、悪性(唾液腺外)4
 筋上皮性腫瘍、良性(唾液腺外)7
 唾液腺多形腺腫25
 粘液線維肉腫5
 筋肉内粘液腫5
 粘液腫(Mazabraud症候群)5
 傍突起細胞腫2
 骨線維性異形成10
 骨芽細胞型骨肉腫3
 軟骨芽細胞型骨肉腫10
 傍神経節腫1
 明細胞肉腫8
 類上皮肉腫3
 低悪性度線維粘液性肉腫10
 Ewing肉腫/未熟神経外胚葉性腫瘍6
 紡錘形細胞型肉腫3
 小計160
合計 323

出典:Vujovic S, et al. Brachyury, a crucial regulator of notochordal development, is a novel biomarker for chordomas. J Pathol 2006;209:157-65.

(脊索腫。左:H&E染色、右:Brachyury染色。腫瘍細胞の核に陽性となる。)

執筆日:2013/03/28 2023/8/2修復・一部改定・削減

執筆者:神戸大学医学部附属病院病理診断科 酒井康裕(現:関西医科大学総合医療センター)