CA19-9
クローン:121LSE (Mouse monoclonal antibody)
メーカー:Roche (760-2609)
希釈倍率:Ready-to-use
抗原賦活化:処理なし
推奨陽性コントロール:膵
染色パターン:細胞膜
(上記は神戸大病理部での条件(Ventana BenchMarkXT)。抗体は必ずしも全てのメーカーを比較して選択しているわけではありませんので、必ずしも“推奨メーカー”という意味ではありません。)
CA19-9は血液型抗原の一種であるルイスAにシアル酸が付加した糖鎖抗原(シアリルLea抗原、シアリルラクトN-フコペンタオースIIの糖鎖上の抗原決定基)で、Lea抗原陽性の成人及び胎児では、膵管、胆管、胆嚢上皮、胃腸上皮の一部の細胞膜に局在している。血清中には分子量5000万以上の巨大なシアロムチンとしてLeaの血液型抗原など多くの糖鎖とともに存在する。本来、膵管、胆管を通り、消化管に排泄されているが、膵、胆管系および消化管などの癌で大量に作られ、血清中に増加する。消化器系の癌細胞に高頻度に発現して、血管内皮細胞のE-セレクチンと結合して、血行転移を促進させるとされる。
(正常膵組織)
用途:
胃、腸および膵の腺癌を含む消化管腫瘍の大部分で陽性となる。膀胱尿路上皮癌、子宮内膜腺癌、甲状腺乳頭癌、胆嚢癌、肺腫瘍(腺癌、扁平上皮癌、小細胞癌)などでも陽性となる。特異性が低く、原発巣推定には役立たない。CA19-9染色をすることで病理診断上得られる情報は少なく、必要性は低いように思われる。
(自験例(尿路上皮癌))
(注)血清CA19-9値が高値で、その原因となりうる病変が臨床的にそこしかなければ、病変においてCA19-9染色陽性となるかもしれないが、逆に、病変でCA19-9染色陽性であっても、それがすなわち血清CA19-9値高値ではない。CA19-9染色はあくまで定性検査である。
執筆日:2012/12/18
執筆者:神戸大学医学部附属病院病理診断科 酒井康裕(現:関西医科大学総合医療センター)