Calretinin
抗体: DAKO (M7245), DAK Calret 1 (mouse monoclonal) / Abcam Anti-Calretinin 抗体 (ab244299)
(上記は一例に過ぎません。抗体は必ずしも全てのメーカーを比較して選択しているわけではありませんので、必ずしも”推奨メーカー”という意味ではありません。)
推奨陽性コントロール: 中皮腫
染色パターン:核+細胞膜:核が重要
troponin C superfamilyに属する細胞間のcalcium-binding protein。
正常では中皮、精巣・卵巣のステロイド産生細胞、神経組織、mast cellsなどに陽性だが、主な用途は中皮腫の診断であろう。 核の陽性像が重要。単独では不十分でパネルを用いた診断が有用。
また、陽性となるのは中皮腫のみではないことに注意。比較的広範囲の腫瘍に陽性となる。Lugliらによるtissue arrayを用いたstudyがある。
陽性となる腫瘍の例
副腎皮質腺腫adrenal cortical adenoma:高率に陽性。pheochromocytomaは陰性(Zhang PJ et.al)
心臓粘液腫cardiac myxoma
卵巣線維腫ovarian fibroma、莢膜細胞腫thecoma
顆粒膜細胞腫granulosa cell tumor
性索間質性腫瘍sex-cord stromal tumors
ステロイド細胞腫瘍steroid cell tumor
嗅神経細胞芽腫olfactory neuroblastoma
エナメル上皮腫ameloblastoma
子宮adenomatoid tumor
滑膜肉腫synovial sarcoma
一部の上皮性腫瘍
その他
■副腎の皮質選手とpheochromocytomaの鑑別
上記の通り。
■子宮adenomatoid tumor
HEでも診断可能であるが、確認のため染色されることも多い
■心臓粘液腫cardiac myxoma
上記のごとく陽性であるので診断の確認に有用(endocardial sensory nerve由来であるため)
■鼻腔腫瘍のsmall round blue cell tumorsのなかではほぼolfactory neuroblastomaのみに陽性で、鑑別に有用。
■AmeloblastomaとOdontogenic Keratocyst(従前のKCOT)の鑑別
Ameloblastoma、特にunicytic ameloblastomaはodontogenic keratocystとの鑑別が困難となる。Calretininはameloblastomaに陽性となり、odontogenic keratocystは陰性(陽性であってもわずかのみ)。
Patholog Res Int. 2014; 2014: 308240
■Hirshsprung病の診断
同疾患の病変部位では外来神経のみのためCalretinin陰性である。正常部位では神経叢の神経節細胞や内因性神経線維に陽性であるので区別される。術中迅速診断に応用可能な迅速免疫組織学の導入が待たれる。
Modern Pathology volume 22, pages1379–1384 (2009)
↓中皮腫での染色例。
執筆日:2005/1/26, 2023/8/2修復および大幅に追記
執筆者:神戸大学病院病理部病理診断科 伊藤 智雄