抗体データベース

cyclin D1

抗体:SP4(ニチレイ 413521〔rabbit〕) 

推奨陽性コントロール マントル細胞リンパ腫例, 腸管の上皮の核, 血管内皮, 組織球
染色パターン

(上記は神戸大学の条件。抗体は必ずしも全てのメーカーを比較して選択しているわけではありませんので、必ずしも”推奨メーカー”という意味ではありません。)

反応性:マントル細胞リンパ腫、骨髄腫、乳癌食道癌などの腫瘍、血管内皮

用途その他:

Cyclin D1はマントル細胞リンパ腫のt(11;14)(q13;q32)の転座の11番染色体切断点近傍からクローニングされた。PRAD1 と同一である。Cyclin D1はその名のとおり細胞分裂周期に深く関わっており、いろいろな腫瘍で高発現している。リンパ腫に関しては、しかし、マントル細胞リンパ腫、骨髄腫などに限られており、診断上ではマントル細胞リンパ腫に特に重要である。

マントル細胞リンパ腫と診断される症例のなかにはcyclin D1の高発現(核に一致した染色結果となる)を示さない症例も含むことがあるが、予後は高発現例が悪いことが知られており、高発現例に限ってマントル細胞リンパ腫と診断する趨勢にある。骨髄腫でもマントル細胞リンパ腫同様の染色体異常が認められ、cyclin D1の高発現例が知られている。なぜ分化段階の異なる腫瘍で同じ異常が出現するのかは現在のところ不明である。骨髄腫におけるcyclinD1高発現例では特別な臨床病理学的特徴は未だ明らかではなく、診断上も形態的な特徴が顕著であるのでそれを検索する重要性はないと思われる。

以前は、染色が難しく、false negativeによる誤判断が多かったが、現在はrabbitモノクローナル抗体SP4で良好な結果が得られるようになった(Pruneri et.al)。

↓マントル細胞リンパ腫:CyclinD1の高発現を認める

【以下追記2021.2.22伊藤】

■骨髄腫の約1/4の例に陽性(Mod Pathol. 1997 Sep;10(9):927-32.). lymphoplasmacytic lymphoma, MALT lymphomaなどとの鑑別に有用

■Langerhans cell histiocytosisの腫瘍性組織球に陽性。反応性のLangerhans cellsには陽性とならない。(Am J Surg Pathol. 2017 Oct;41(10):1390-1396)

■Rosai Dorfman diseaseにも陽性。(Br J Haematol. 2019 Sep;186(6):837-844.によれば86%)

■YWHAE-FAM22 rearrangementを示す子宮内膜肉腫 YWHAE-FAM22症例は100%に陽性。その他の遺伝子変異症例ではみられない。 (Am J Surg Pathol. 2012 Oct;36(10):1562-70.

筆日:2006/2/1006/3/8小修正 2021/2/22伊藤追記 2024/10/16小改訂・追記

執筆者:岡山大学病理病態学教室 吉野 正