抗体データベース

MTAP

(methylthioadenosine phosphorylase)

抗体:Abnova Corporation、2G4 (full length MTAP (1-154 a.a))(mouse monoclonal antibody)
希釈倍率:1:200 (推奨濃度記載なし)
1次抗体反応時間:15分
抗原不活化:high pH (Bond, ER2) 20分
(上記は一例に過ぎません。抗体は必ずしも全てのメーカーを比較して選択しているわけではありませんので、必ずしも”推奨メーカー”という意味ではありません。)

推奨陽性コントロール:血管内皮細胞、リンパ球など

染色パターン:細胞質

主な用途:中皮の良悪性判別

MTAPとは9p21に存在する癌抑制遺伝子で、多様な腫瘍で変異・欠失が見られ、中皮腫でも40-80%に変異・欠失が見られる。CDKN2Aと近い位置(約100kb)に存在することから、CDKN2Aホモ欠失のよい代替アッセイとなる(感度78%, 特異度96%)(文献1 )。免疫染色では、MTAPの細胞質発現が欠失する。核・細胞質とも発現欠失する例が多いが、細胞質発現欠失がCDKN2Aホモ欠失を反映するため(文献2)、細胞質発現の欠失が重要である。一般的にはびまん性の細胞質欠失を有意所見とするが、部分的・不均一に欠失する症例もあり、部分的・不均一な欠失も遺伝子異常を反映していることが多いとされている(文献3). いずれにしても、内因性コントロールの陽性像を得た上での評価が重要.

部位別では、胸膜(43-86%)>腹膜(19%)と胸膜中皮腫で欠失率が高い。胸膜中皮腫では、CDKN2Aホモ欠失が上皮型(62-80%)<肉腫型(80-93%)で高頻度に確認されるが、MTAP細胞質欠失も、上皮型(43-65%)<肉腫型(86%)と肉腫型で高頻度となっている(文献4)。一方、多数の論文で、良性中皮のMTAP細胞質欠失率は0%であったと報告されている。多様な腫瘍でMTAPの欠失が見られることから、中皮腫に対する特異性はない。

文献1: Chapel et al. Mod Pathol. 2020;33:245-254

文献2: Hamasaki et al. Histopathology 2019;75:153-155

文献3: Chape et al. Histopathology. 2021;78:1032-1042

文献4: Churg and Naso. Am J Surg Pathol 2020; 44: e100-e112

写真:Mesothelioma in situ (自験例:左HE、右MTAP) MTAPの細胞質発現が欠失している. 必ず、内因性コントロールの血管内皮やリンパ球が陽性であることを確認して判定する.

執筆日:2021/9/27

執筆者:神戸大学医学部附属病院病理診断科 神保直江