Podoplanin (NZ-1, D2-40など)
抗体:
・DAKO, Clone D2-40, M3619 (神戸大使用抗体)
・コスモバイオ, NZ-1
ポドプラニン(podoplanin)は、リンパ管内皮細胞マーカーとしてよく知られており、血管からリンパ管を確実に見分けるために用いられる。 ポドプラニンは様々な研究グループによって別々にクローニングされ、様々な名前が付いている。また、D2-40のように、抗体が先に作られ、後からその抗原がポドプラニンと同じであることがわかった例もある。D2-40は抗ポドプラニン抗体の名前であり、その抗原はM2Aという名前で呼ばれていた。
以下のように整理して頂きたい。
抗体名anti-podoplanin(抗原名podoplanin );AngioBioから販売
抗体名NZ-1 (抗原名Aggrus);AngioBioから販売
抗体名D2-40 (抗原名M2A) ;Signet labなどから販売
これらの名前が混乱して使用されているが、リンパ管内皮細胞マーカーとして有用な抗原は、あくまで”podoplanin“である。各グループから遺伝子がクローニングされたが、現在は”podoplanin”という名前で統一されている。<D2-40とpodoplaninの比較>というような病理の論文が今でも見られるが、これらは全く同じ蛋白に対して、違う抗体を用いて評価しているだけである。 一般論になるが、抗原が未知のものに対する抗体が有用性の高い抗体の場合は抗体の名前をマーカー名として用いても良いが、ポドプラニンのように抗原がはっきり判明したものに関しては、混乱を避けるために抗原名で呼ぶべきである。
抗体NZ-1
免疫動物:Rat ● クローン:NZ-1 ● バッファー:PBS(0.09% NaN3を含む) ● 抗体クラス:ラットIgG2a(精製) ● 非交差種:マウス、ラット ● 特異性:ヒトリンパ管内皮細胞のポドプラニン(免疫染色、免疫組織化学染色) ● 適用:免疫染色、免疫組織化学染色、ウェスタンブロッティング、免疫沈降、フローサイトメトリー
[希釈率] ● 免疫染色/免疫組織化学染色⇒1:200 ● ウェスタンブロッティング⇒1:200以上 ● 免疫沈降⇒1:50 ● フローサイトメトリー⇒1:200
参考文献→http://www.geocities.jp/yukinarik/references.htm
執筆日:2006/10/12 (2011.6.30 一部改変・追記)
執筆者:デューク大学メディカルセンター 加藤 幸成 yukinarik@yahoo.co.jp (内容の転載に関し、コスモ・バイオ株式会社のご了承を頂いています)
<追記> D2-40は腫瘍細胞そのものの細胞膜に陽性を示す場合があり、特に単一細胞ではリンパ管侵襲との鑑別を要する所見を示し、注意が必要である。 また、D2-40は胸水において肺原発性腺癌と中皮腫の鑑別において優秀な中皮腫マーカーとされるが、通常の腫瘍における染色でも腫瘍細胞に陽性となることがあり、注意を要する。Bassarova AV, Nesland JM, Davidson B. D2-40 is not a specific marker for cells of mesothelial origin in serous effusions. Am J Surg Pathol. 2006 Jul;30(7):878-82. 血管性腫瘍においては、リンパ管でなくともD2-40が高頻度に陽性となることにも注意が必要である。(筑後孝章先生、伊藤智雄による追記) Cutaneous angiosarcoma: own experience over 13 years. Clinical features, disease course and immunohistochemical profile. Donghi D, Kerl K, Dummer R, Schoenewolf N, Cozzio A.J Eur Acad Dermatol Venereol. 2010 Oct;24(10):1230-4. |
※近年は血管やリンパ管性の腫瘍の他に、primary adrenal cortical tumors, schwannomas, and adnexal tumors of the skinなども陽性となることが知られている。(Kalof AN, Cooper K. Adv Anat Pathol. 2009 Jan;16(1):62-4. D2-40 immunohistochemistry–so far!) 2013年3月27日 (広島市立広島市民病院病理部 高田 晋一先生による情報提供)
※Epithelioid sarcomaにもERG, FLI1とともにD2-40陽性となる報告あり。
(Mod Pathol. 2014 Apr;27(4):496-501. doi: 10.1038/modpathol.2013.161. Epub 2013 Sep 27.)
(2021/7/12 友愛記念病院 病理診断科 高田 晋一先生による情報提供)
追記日:2014/1/10→2024/10/16改変
追記者:神戸大学医学部附属病院病理診断科 酒井康裕(現:関西医科大学総合医療センター)、伊藤智雄