Rb1
(Retonoblastoma1)
抗体:BD Biosciences、G3-245(Mouse monoclonal antibody)
希釈倍率:1:100 (推奨濃度 記載なし)
1次抗体反応時間:15分
抗原賦活化:high pH (Bond ER2) 20分
(上記は一例に過ぎません。抗体は必ずしも全てのメーカーを比較して選択しているわけではありませんので、必ずしも”推奨メーカー”という意味ではありません。)
推奨陽性コントロール:血管内皮細胞、リンパ球など
染色パターン:核
主な機能:Rb1はRetinoblastoma(網膜芽細胞腫)の原因遺伝子として発見されたがん抑制遺伝子で、Rb1蛋白の主な機能は、細胞周期を制御し、リン酸化されるとE2F(転写因子)とともに、G1→S期の移行を抑制することである. Rb1蛋白の機能が障害されることで、細胞周期にブレーキが掛からず、異常細胞分裂が繰り返され、多種多様な発癌に関与している。
主な用途:
- 神経内分泌癌診断の補助
臓器によらず、神経内分泌癌(特に小細胞癌)では高頻度にTP53とRb1の機能喪失型の両アレル欠失がみられることが特徴で、免疫染色においても、多くの症例(小細胞癌では>90%)でRb1の発現欠失(多くは完全欠失)が確認できる(文献1・写真左)。神経内分泌癌以外の癌でも、一部(<10%)でRb1の欠失がみられることから、特異性が低いことに注意する必要があるが、神経内分泌癌の診断の補助にはなり得る。またRb1変異がある非小細胞癌は予後が悪く再発リスクが高い(文献2)、Rb1不活性化のあるEGFR変異陽性非小細胞癌では、EGFR-TKIによって小細胞癌への形質転換リスクが約10倍高い(文献3)など、一般的にRb1異常の存在は予後不良な因子とされている。
- LCNECの亜型分類
近年、肺の大細胞神経内分泌癌(LCNEC)は、Rb1不活性がない群(Type I LCNEC)とRB1不活性化群(Type Ⅱ LCNEC)に大別され、前者は非小細胞癌に近く、後者は小細胞癌に近い臨床病理学的特徴を有することがわかってきた(文献4)。2021年現在、LCNECに対してRb1の免疫染色をルーチンで行うことに十分なエビデンスはないものの、Rb発現の有無で化学療法効果に差があるとする報告も複数あり(文献5)、近未来的にはLCNECの治療戦略を考える上で、重要なマーカーとなりうる。
- いわゆる13q/RB1 family of tumor診断の補助
いわゆる13q/RB1 family of tumor (spindle cell/pleomorphic lipoma, cellular angiofibroma, myofibroblastoma, atypical pleomorphic lipomatous tumor, pleomorphic liposarcoma)では13qの欠損及びRb1不活性化がみられ、免疫染色でも高頻度にRb1欠失が見られるが(文献6)、部分的欠失・発現低下となる例もあるなど、判定がやや難しい印象がある(写真右)。
文献1:George J et al.Nature 2015;524;47-53
文献2:Bhateja P et al.Cancer Medicine 2019;8: 1459-1466
文献3:Lee et al. J Clin Oncol 2017; 35;3065-3074
文献4:George J et al. Nat Commun. 2018; 9:1048
文献5:Derks et al. J Thorac Oncol 2021 Jun 14;S1556-0864(21)02228-0.
文献6: Creytens et al. Am J Surg Pathol 2017;41:1443–1455
写真(自験例)
左:肺の小細胞癌:腫瘍部でRb1完全欠失が見られる.
右:cellular angiofibroma:Rb1が欠失あるいは発現低下した細胞が多く見られる
(内因性コントロールの血管内皮やリンパ球が陽性であることを確認することが重要)
左:肺の小細胞癌:腫瘍部でRb完全欠失が見られる.
右:cellular angiofibroma:Rbが欠失あるいは発現低下した細胞が多く見られる
(内因性コントロールの血管内皮やリンパ球が陽性であることを確認することが重要)
執筆日:2021/9/27
執筆者:神戸大学医学部附属病院病理診断科 神保直江