TTF-1
(Thyroid transcription factor-1 別名Nkx 2.1)
神戸大学での条件
クローン:8G7G3/1 (Mouse monoclonal antibody)
メーカー:DAKO
希釈倍率:1:100
1次抗体反応時間:16分
抗原賦活化:high pH(Ventana, CC1). 60min
(上記は一例に過ぎません。抗体は必ずしも全てのメーカーを比較して選択しているわけではありませんので、必ずしも”推奨メーカー”という意味ではありません。)
推奨陽性コントロール:甲状腺濾胞上皮、肺胞上皮
染色パターン:核
主な機能と用途
- 甲状腺特異遺伝子(thyroglobulin, TPO)や肺特異遺伝子(SP-A, B,C, CCSP)の転写調節
- 正常の甲状腺、肺、間脳腹側(視床・視床下部・漏斗部・松果体・下垂体後葉)に陽性
- 多岐な腫瘍に陽性となり、発現の理由は、①正常組織のカウンターパートとして、②腫瘍形成の過程で活性化、③その他(交差反応など)に分けられる。
- 主には、クローン3つあり。一般的に、感度 SP141>SPT24>8G7G3/1、特異度SP141<SPT24<8G7G3/1とされている。1
TTF-1陽性となる腫瘍
腺癌 | 肺癌2, 甲状腺癌,Mesonephric carcinoma/Mesonephric-like carcinoma(10-100%)3, 子宮内膜癌(5-20%程度)4、大腸癌(5%前後)5、胃癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、唾液性癌、胆管癌なども報告例あり |
神経内分泌腫瘍 | どの臓器であっても小細胞癌なら80-90%程度陽性6 LCNEC では50%程度に下がる NET G1, G2では更に陽性率下がる(臓器にもよるが、20-30%程度) |
間脳腹側由来の腫瘍 | 第3脳室由来 -Ependymoma, Chordoid glioma, subependymal giant cell astrocytoma 下垂体後葉由来 -Pituicytoma, granular cell tumor, spindle cell oncocytoma |
その他 | Schwannoma (SPT24, 67%が核陽性) 7 T-Lymphoblastic lymphoma(TTF-1とのactivating rearrangementによる) 肝細胞癌(8G7G3/1, 細胞質に陽性) |
注釈と文献
- SP141, SPT24は一部(<10%)の肺扁平上皮癌にも陽性となるが、低レベルのTTF-1発現を有する肺扁平上皮癌も存在するのでは?という見方もあり。(Am J Clin Pathol 2018;150:533-544)
- TTF-1陽性肺腺癌はドライバー遺伝子異常を有している頻度が高く(Histopathology 2021;78:987-999)、pemetrexedへの反応性が良く(Clin Lung Cancer 2020;21:e607-621)、総じて予後良好。
- 正常の中腎管は陰性。likeの方が陽性率高い (Am J Surg Pathol 2018;42:1596–1606)
- 低分化、Stage highなほどTTF-1陽性率高い(Am J Surg Pathol 2007;31:1759–1763 ).
- 3クローンとも陽性例(<9%)は左側結腸・直腸のみで、右側結腸は陽性例なし(Am J Clin Pathol 2018;150:533-544)
- NECでのTTF-1陽性率は、ASCL1/NEUROD1陽性群で有意に高い
TTF-1陽性(>1%)率(神戸大学での検討)
ASCL1/NEUROD1陽性 SCLC 95% vs POU2F3 陽性 SCLC 9%
ASCL1/NEUROD1陽性 LCNEC 73% vs POU2F3陽性 LCNEC 0% 正常のシュワン細胞は陰性(Human Pathology 2018;71:84-90)
執筆日:2022/06/20
執筆者:神戸大学病院病理部病理診断科 神保直江