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患者血清を用いた病原体同定の一例

2006年3月10日

使用血清:皮膚Malassezia furfur感染症患者の血清

希釈倍率: x500(一晩反応、間接法(HRP標識抗ヒト抗体使用))

抗原賦活化: なし

推奨陽性コントロール: 皮膚Malassezia furfur感染(あるいは定着)病巣

陽性パターン: 一般病原性細菌、真菌の菌体

 

反応性、性状および用途:

・本血清を採取した患者は、皮膚Malassezia furfur感染症(毛包炎または癜風)が確認されていた。

・本血清は、カンジダ、アスペルギルス、クリプトコッカス、ムコール、スポロトリックスなどの代表的な病原性真菌と反応することを確認済みである。(黄色および表皮)ブドウ球菌などの常在細菌にも広く陽性となる。

・特異抗体を保有していない真菌症、または真菌菌体が疑われる組織標本中の構造物に対して、スクリーニング目的に使用可能である。

・市販抗体と比べて、非特異反応が多いことは避けられない。内因性ペルオキシダーゼ阻止を強めに行う、血清の濃度や作用時間、間接法の条件を最適化するなどの対策が必要である。

・患者血清は、採取された全血から遠心分離後、-20℃で凍結保存してある。保存のための特別な処理は行っていない。長期に反復使用する場合は、凍結分注して保存することが望ましいが、数回の凍結融解では反応性が低下するようなことはない。数年以上保存した場合でも、反応性の著しい低下は経験していない。

・バイオハザード防止の観点から、肝炎ウイルスやHIVなどが陽性の患者血清を使用すべきでないことはもちろんである。

(顕微鏡写真)

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1. Malassezia furfur定着を示す皮膚角化層。酵母様真菌がみられる(Grocott染色)。

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2. 1. と同一標本に患者血清を反応させたもの。血清提供者とは別の患者標本である。酵母様真菌の菌体に一致して陽性所見がみられる。

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3. 1. と同一標本中の毛包内に定着しているブドウ球菌(表皮ブドウ球菌と考えられる)に一致した陽性所見がみられる。

 

 

執筆日: 2006/3/10

執筆者: 藤田保健衛生大学医学部第一病理学 下村龍一

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