PIN4
34βE12 & p63 & CK5 & CK14のカクテル免疫染色
前立腺癌の免疫組織を使った補助的診断方法は非常に重要な手段となっている。最も古くからはhigh molecular weight cytokeratinである34βE12を用い、基底細胞の有無によって良悪性判断の一助として用いてきた。近年は核に陽性となる抗体であるp63がそれに加わり、さらに、癌ならびに前癌状態であるPINにおいてP504S(AMACR)が陽性となることも有効な手段として用いられるようになってきている。 ここではこれらのコンビネーションを一気に観察することのできるPIN4を紹介する。 このカクテル抗体では基底細胞をp63、CK5, CK14をDAB で茶色に染色し、同時に腫瘍となると陽性化するP504S(AMACR)をFast Redにて赤に染色する。この結果、癌をきわめて明瞭に描出することができる。
Protocol
1 脱パラフィン
2 抗原賦活処理 熱処理(pH8.0 EDTA ) 圧力鍋 2分30秒
3 内因性酵素除去処理 Peroxidase Blocking Reagent 室温 10分
4 洗浄 Tris Buffer (0.05mol/L pH7.6) 5分×4回
5 非特異蛋白吸収処理 0.5%スキムミルク/TBS 室温 10分
6 洗浄
7 一次抗体 4℃ over night Prediluted Double Stain Antibody Pin-4 Cocktail(BIOCARE) (Epitope/Antigen:CK5+CK14+p63+P504S) (Clone:M26+LL002+BC4A4+N/A)
8 洗浄
9 二次抗体 室温 30分 Double Stain Polymer Detectin Kit #2(BIOCARE)
10 洗浄
11 発色反応(HRP) 3-3`-Diaminobezidine-4HCl(DAB) 室温 3分
12 洗浄
13 発色反応(ALP) Valcan Fast Red Chromogen Kit 室温 20分
14 対比染色(核染) Hematoxylin 室温 10秒
15 乾燥
16 透徹
17 封入
鑑別表
P504S(赤) | p63 & HMW-CKs(茶) | |
normal | – | + |
PIN | + | + |
carcinoma | + | – |
Prostatic intraepithelial neoplasia (PIN)の染色結果:胞体にP504S(赤)が陽性であり、腫瘍性性格が示唆されるが、p63(茶)、HMW-CKs(茶)で陽性となる基底細胞に囲まれており、癌との診断にはならない。
前立腺癌:胞体がP504S(赤)陽性、基底細胞(茶)を欠如する腺管を認める。周囲の非癌部とのコントラストが非常に明瞭である。正確な診断に有用と考えられる。
執筆日:2009.01.19
執筆者:神戸大学病院病理部 柳田 絵美衣、伊藤 智雄