FSH
(卵胞刺激ホルモン、Follicle Stimulating Hormone)
Mouse monoclonal antibody
クローン:C10
メーカー:DAKO (M3504)
希釈倍率:1:50
抗原賦活化:処理なし
推奨陽性コントロール:下垂体
染色パターン:細胞質
(上記は神戸大病理部での条件(Leica BondMax)。抗体は必ずしも全てのメーカーを比較して選択しているわけではありませんので、必ずしも“推奨メーカー”という意味ではありません。)
FSHは下垂体前葉の性腺刺激ホルモン産生細胞で合成・分泌される糖蛋白質で、黄体化ホルモン(Luteinizing hormone、LH)と共にゴナドトロピンと呼ばれる。二量体の蛋白質サブユニットのそれぞれが糖へ結合している。蛋白質二量体にはα及びβサブユニットと呼ばれる2つのポリペプチドユニットが含まれ、LH、FSH、TSH、hCGのαサブユニットは同一で92のアミノ酸から成る。βサブユニットは異なっており、FSHでは118のアミノ酸からなり、特異な生物学的作用を与えて、FSH受容体との相互作用の源となっている。卵巣内でFSHは未成熟の卵胞の成長を刺激し成熟させる。男性においてFSHは精巣のセルトリ細胞のアンドロゲン結合蛋白質の産生を増幅し、これは精子形成に重要である。ゴナドトロピンは視床下部から分泌されているゴナドトロピン放出ホルモン(Gonadotropin Releasing Hormone、GnRH)、卵巣・精巣からの性ステロイドホルモンとともに間脳-下垂体-性腺システム(フィードバック機構)を形成している。
(下垂体前葉におけるFSH染色)
用途:FSH産生の確認。FSH産生腫瘍など。
(自験例(下垂体腺腫(臨床的にFSH産生腫瘍))。左:H&E染色、右:FSH染色)
(注)FSH染色をすることにより、細胞内に一定量のFSHが含まれていることを確認できる、すなわち、FSH染色は定性検査であるが、血清FSH濃度や臨床症状を表すものではない(定量検査ではない)。
執筆日:2012/12/4
執筆者:神戸大学医学部附属病院病理診断科 酒井康裕、柳田絵美衣、今川奈央子