Thrombomodulin
Mouse monoclonal antibody
クローン:1009
メーカー:Dako (M0617)
希釈倍率:1:25
抗原賦活化:Enzyme、4分
推奨陽性コントロール:血管、絨毛膜羊膜
染色パターン:細胞膜
(上記は神戸大病理部での条件(Ventana BenchMarkXT)。抗体は必ずしも全てのメーカーを比較して選択しているわけではありませんので、必ずしも“推奨メーカー”という意味ではありません。)
止血血栓過程において中心的役割を果たす血管内皮細胞は、血小板や凝固・線溶系の機能および血管の収縮・拡張を制御する多くの因子を産生・放出している。血管内皮細胞上の膜蛋白であるトロンボモジュリンは、トロンビンと複合体を形成して、トロンビンの凝固活性を直接阻害するのみならず、抗凝固因子であるプロテインCの活性化を助け、活性化された凝固因子(第V因子、第VIII因子)を不活化させ、血液凝固を抑制する。遺伝子組換えトロンボモジュリンが開発され、播種性血管内凝固症候群の治療薬として注目も集めている。
(Thrombomodulin染色。左上:結腸、右上:甲状腺、左下:絨毛膜羊膜。)
用途:病理診断上、Thrombomodulin染色を利用することは少ないと思われる。
●胸膜生検や胸水セルブロック等における、上皮型悪性中皮腫と肺腺癌との鑑別には、現在では中皮腫マーカーとしてCalretinin染色、CK5/6染色、Podoplanin染色、WT1染色が利用されるが、これらの染色態度が今一つ不明瞭な時にThrombomodulin染色は追加マーカーとして行われることがある。(感度61%、特異度80%)
参考:King JE, et al. Sensitivity and specificity of immunohistochemical markers used in the diagnosis of epithelioid mesothelioma: a detailed systematic analysis using published data. Histopathology 2006;48:223-32.
●血管分化マーカーとしては、CD31染色やCD34染色、Factor VIII染色が利用されることが多い。
●尿路上皮癌や移行上皮癌、ブレンナー腫瘍、扁平上皮癌で陽性率が高く、膵管癌や乳管癌などでも陽性となりうるが、Thrombomodulin染色が陽性だからといって病理診断上、疾患特異性の高いものではない。
(自験例(上皮型胸膜悪性中皮腫)。左:H&E染色、右:Thrombomodulin染色)
執筆日:2012/12/25
執筆者:神戸大学医学部附属病院病理診断科 酒井康裕、柳田絵美衣、今川奈央子