Melan A
Mouse monoclonal antibody メーカー:
Nichirei クローン:M2-7C10
希釈倍率:1:10
抗原賦活化:CC1, 60分
推奨陽性コントロール:皮膚
染色パターン:細胞質
(上記は兵庫県立がんセンターでの条件(Ventana BenchMarkXT)。抗体は必ずしも全てのメーカーを比較して選択しているわけではありませんので、必ずしも“推奨メーカー”という意味ではありません。)
Mouse monoclonal antibody
メーカー:Abcam (ab82762)
クローン:cocktail – HMB45+A103+T311
希釈倍率:希釈済
抗原賦活化:ER1, 10分
推奨陽性コントロール:皮膚
染色パターン:細胞質
(上記は神戸大病理部での条件(Leica BOND-MAXTM)。抗体は必ずしも全てのメーカーを比較して選択しているわけではありませんので、必ずしも“推奨メーカー”という意味ではありません。)
Melan Aは、別名MART-1 (Melanoma Antigen Recognized by T cells-1)とも呼ばれる。HLA-A2と結合し細胞傷害性T細胞(CTL)によって認識される 黒色腫関連抗原の一つで、その遺伝子は9p24.1(18kb, 5つのエクソン)にコードされている。118 アミノ酸から構成される22kDaのIII型膜蛋白で、小胞体やトランスゴルジネットワーク、メラノゾーム(特にstage I, II)に局在している。正常組織では、重層扁平上皮内のメラノサイトや網膜で陽性となるが、汎用されているクローンA103を使うと、交差反応として(melan A遺伝子はない)ステロイドホルモン産生細胞(副腎皮質、卵巣の顆粒膜細胞・莢膜細胞、精巣のライディッヒ細胞)にも陽性となる。
(成人ヒト皮膚のメラノサイト。上:H&E染色、下:Melan A染色。)
(成人ヒト精巣のライディッヒ細胞。上:H&E染色、下:Melan A染色。)
(成人ヒト副腎皮質。上:H&E染色、下:Melan A染色。)
用途:
信頼できる悪性黒色腫マーカーとして利用されている。
OhsieらによるReviewによると、類上皮型、多形性、転移性黒色腫に対する陽性マーカーのうち、S-100は感度97-100%、特異度75-87%、HMB45は感度69-93%(原発性77-100%、転移性56-83%)だが、melan Aは感度75-92%、特異度95-100%である。
文献:Ohsie SJ, et al. Immunohistochemical characteristics of melanoma. J Cutan Pathol 2008;35:433-44.
色素性母斑やメラノサイト分化・メラノサイト増生を伴う病変(PEComa、明細胞肉腫、色素性アポクリン汗嚢腫、メラニン性毛芽腫、メラノアカントーマ、メラニン性神経鞘腫、色素細胞性筋上皮腫、悪性黒子、爪甲色素線条など)の他、副腎皮質腫瘍(腺腫、癌、癌肉腫)、性索間質性腫瘍(セルトリ・ライディッヒ細胞腫、ライディッヒ細胞腫、硬化性間質性腫瘍、線維莢膜細胞腫)、Renal cell carcinoma associated with Xp11.2 translocations/TFE3 gene fusion、類上皮血管肉腫などでもmelan A染色が陽性となることが報告されている。
(自験例(無色素性悪性黒色腫)。上:H&E染色、下:melan A染色。)
(自験例(セルトリ細胞腫)。上:H&E染色、下:melan A染色。)
(自験例(副腎皮質腺腫)。上:H&E染色、下:melan A染色。)
(自験例(PEComa)。上:H&E染色、下:melan A染色。)
執筆日:2013/12/12
執筆者:
神戸大学医学部附属病院病理診断科 酒井康裕、柳田絵美衣、今川奈央子
兵庫県立がんセンター病理診断科 佐久間淑子、新田篤史、藤野里佳