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CA125

2023年8月2日

(Cancer Antigen 125)

クローン:M11 (Mouse monoclonal antibody)

メーカー:Dako (#M3520)

希釈倍率:1:80

抗原賦活化:ER1、10分

推奨陽性コントロール:肺、絨毛膜羊膜、CA125陽性腺癌

染色パターン:細胞膜

(上記は神戸大病理部での条件(Leica BOND-MAXTM)。抗体は必ずしも全てのメーカーを比較して選択しているわけではありませんので、必ずしも“推奨メーカー”という意味ではありません。)

Cancer antigen 125(CA125)は、別名Carbohydrate Antigen 125、Mucin16、MUC16とも呼ばれ、ムチン蛋白質スーパーファミリーの一つであり、MUC16遺伝子によってコードされている。ヒトCA125はアイソフォーム、蛋白質切断、N-ないしO-結合型グリコシル化などの要因により、膜貫通型・分泌型、アミノ酸残基数1148~22159、分子量200~5000 kDaと多様な状態で存在する。細胞内小セグメントと細胞外大ドメインから構成されるが、細胞内のリン酸化反応によってCA125の切断が誘導され、細胞外ドメインが遊離する。細胞外ドメインは、糖鎖修飾を受け、多数のジスルフィド結合を含んでいる。CA125の発現は正常マウスにおいて気管上皮、口腔内の分泌腺、嗅腺、蝸牛管表面の上皮、胃の主細胞、体腔の中皮および生殖器官などに見られる。ヒトにおいても同様のパターンで発現し、アポクリン汗腺細胞や乳腺の導管、胎児組織で胎児表皮・羊膜・脊索・腸管残遺物(卵管および尿膜管)・臍帯・心筋・心嚢膜にも発現する。

CA125は臨床的には卵巣癌マーカーとして知られている。CA125血清レベルと腫瘍活性に相関関係があり、高感度に転移を認識するとされる。子宮内膜症や卵巣疾患、妊娠、炎症などの良性病態においても上昇することが知られている。肝、膵、乳房、肺および腎臓など他の臓器の癌においても発現量は増加する。


気管支線毛円柱上皮

絨毛膜

前立腺

用途:

臨床的に血清値として利用されている腫瘍マーカーは、免疫染色という観点からは、概して病理診断上の診断特異性は高くない。すなわち、腫瘍マーカーの免疫染色を試みると、染色面積、染色強度は様々であるものの、多彩な症例、組織型に陽性となってしまうことをよく経験する。CA125染色は、多くの腺癌(卵巣、子宮、膵、胆管、乳癌、肺、甲状腺、食道、胃、結腸、前立腺)や肝細胞癌で陽性となることが報告されている。

血清CA125値が明らかに腫瘍により高値の場合は、CA125染色が腫瘍に陽性となることが予想されるが、特に原発不明癌などで腫瘍にCA125染色陽性であっても、すなわち卵巣癌とは限らないし、血清CA125値が高値とも限らない。CA125染色は確かに婦人科癌で陽性率が高い傾向にあるので、原発不明癌において陽性であれば、その領域の精査を勧める目安になるかもしれない。また、腹水のセルブロックにおいてCA125染色陽性腫瘍の腹腔内播種細胞を見出す道具として有用かもしれない。

卵巣漿液性腺癌HE

卵巣漿液性腺癌CA125

130318_007130318_006

(上皮型胸膜悪性中皮腫。左:H&E染色、右:CA125染色。)

参考文献:

1. Loy TS, et al. Distribution of CA 125 in adenocarcinomas. An immunohistochemical study of 481 cases. Am J Clin Pathol. 1992;98:175-9.

2. Streppel MM, et al. Mucin 16 (cancer antigen 125) expression in human tissues and cell lines and correlation with clinical outcome in adenocarcinomas of the pancreas, esophagus, stomach, and colon. Hum Pathol. 2012;43:1755-63.

■pitfall

CA125は類上皮肉腫epithelioid sarcomaに陽性となることがあり、転移性腺癌と誤らないことが重要である。

参考文献:

Kato H, et al. CA125 expression in epithelioid sarcoma. Jpn J Clin Oncol. 2004;34:149-54.

http://jjco.oxfordjournals.org/content/34/3/149.long

執筆日:2013/03/21 2023/08/02修復

執筆者:神戸大学医学部附属病院病理診断科 酒井康裕、伊藤智雄

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