免疫組織データベース~いむーの



Brachyury

2023年8月2日

クローン:1H9A2 (Mouse monoclonal antibody)
メーカー:Abcam (#ab140661)
希釈倍率:1:1500
抗原賦活化:ER2、10分
推奨陽性コントロール:脊索腫
染色パターン:

(上記は神戸大病理部での条件(Leica BOND-MAXTM)。抗体は必ずしも全てのメーカーを比較して選択しているわけではありませんので、必ずしも“推奨メーカー”という意味ではありません。)

BrachyuryはT遺伝子によってコード化された蛋白で、中胚葉の形成に関与する20以上の遺伝子が存在するT-box遺伝子複合体の転写因子である(第6染色体)。発生学的に主に脊索の発達を調整している。正常成人組織では発現していない。脊索腫細胞においてBrachyuryが活性化していることが見出されたが、Brachyuryの異常発現は余分な遺伝子コピーの存在と関係しているらしい。

用途:

脊索腫のマーカー。

脊索腫に対してBrachyuryの感度は高く、特異度は非常に優れている。脊索腫か、脊索腫様・軟骨様の組織像をとりうる腫瘍かの鑑別に役立つ。現在(2023年)では感度は80-90%の報告が多い。特異度が高いことは問題ない。

報告例:53例中全ての脊索腫にBrachyury染色は陽性であるが、以下の表の症例は全て陰性である。

腫瘍 組織型 分析症例数
軟骨様腫瘍 軟骨芽細胞腫 14
軟骨粘液線維腫 18
軟骨肉腫(四肢) 55
軟骨肉腫(頭蓋底) 9
淡明細胞軟骨肉腫 11
脱分化型軟骨肉腫 5
骨外性粘液型軟骨肉腫 5
間葉性軟骨肉腫(骨) 9
粘液型軟骨肉腫 8
内軟骨腫 12
骨膜軟骨腫 5
滑膜軟骨腫症 12
小計 163
その他 下垂体腺腫 6
肥胖性星細胞腫 2
神経内分泌癌 4
腎癌 6
扁平上皮癌 2
上衣腫 4
粘液乳頭状上衣腫 4
巨細胞腫 2
膠芽腫 5
平滑筋肉腫 6
軟骨様脂肪腫 2
粘液型脂肪肉腫(grade2) 6
悪性黒色腫 2
リン酸塩尿症を伴う間葉系腫瘍 2
筋上皮性腫瘍、悪性(唾液腺外) 4
筋上皮性腫瘍、良性(唾液腺外) 7
唾液腺多形腺腫 25
粘液線維肉腫 5
筋肉内粘液腫 5
粘液腫(Mazabraud症候群) 5
傍突起細胞腫 2
骨線維性異形成 10
骨芽細胞型骨肉腫 3
軟骨芽細胞型骨肉腫 10
傍神経節腫 1
明細胞肉腫 8
類上皮肉腫 3
低悪性度線維粘液性肉腫 10
Ewing肉腫/未熟神経外胚葉性腫瘍 6
紡錘形細胞型肉腫 3
小計 160
合計 323

出典:Vujovic S, et al. Brachyury, a crucial regulator of notochordal development, is a novel biomarker for chordomas. J Pathol 2006;209:157-65.

(脊索腫。左:H&E染色、右:Brachyury染色。腫瘍細胞の核に陽性となる。)

執筆日:2013/03/28 2023/8/2修復・一部改定・削減

執筆者:神戸大学医学部附属病院病理診断科 酒井康裕

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