免疫組織データベース~いむーの



PSA

2012年12月17日

Mouse monoclonal antibody

クローン:ER-PR8

メーカー:Dako (N1550)

希釈倍率:Ready-to-use

抗原賦活化:処理なし

推奨陽性コントロール:前立腺

染色パターン:細胞質

(上記は神戸大病理部での条件(Ventana BenchMarkXT)。抗体は必ずしも全てのメーカーを比較して選択しているわけではありませんので、必ずしも“推奨メーカー”という意味ではありません。)

 

PSAはProstate Specific Antigen(前立腺特異抗原)のことで、分子量33~34kの単鎖糖蛋白である。セリンプロテアーゼに分類される蛋白質分解酵素の一種で、前立腺の腺細胞および導管上皮細胞、尿道周囲の腺から特異的につくられて分泌される。前立腺から精漿中に分泌され精子が体外に放出される時に精漿中のゼリー化成分である蛋白を分解して精子の運動性を高める役割を果たすと考えられている。正常前立腺組織、過形成および悪性前立腺腫瘍組織、また前立腺液・精漿中に存在し、男性の他の正常細胞あるいは他の腫瘍細胞に存在せずに前立腺に特異的である。

121217_001

(正常前立腺)

 

用途: 前立腺腺癌の診断(特に転移巣)。

前立腺癌に対する感度100%、特異度99%とされ、PSA陽性の場合は先ず前立腺由来と考えられる。しかし、同時に行われたPSA染色では、卵巣粘液性腺癌、類内膜腺癌それぞれで10%、胃癌で3%陽性であった。乳癌、卵巣漿液性腺癌、膵癌、十二指腸乳頭部癌、胆管癌、食道腺癌、食道扁平上皮癌、結腸癌、肺癌、肺小細胞癌、肺扁平上皮癌、中皮腫、腎細胞癌では陰性であった。

出典:Dennis JL, et al. Markers of adenocarcinoma characteristic of the site of origin: development of a diagnotic algorithm. Clin Cancer Res 2005;11:3766-772.

 

前立腺癌以外でも少なからず弱~中等度陽性となりうるので、どんな免疫染色とも同様に、PSA染色陽性の意義はあくまで各種情報との総合判断である。

組織

PSA染色

PSA

1

2

3

陽性率[%]

前立腺癌、ホルモン不応性

1

4

0

45.45

前立腺癌、転移

0

1

8

100.00

前立腺癌、未治療

1

3

60

98.46

前立腺、正常組織

1

0

5

100.00

乳癌、乳管癌転移

0

2

0

0.53

乳癌、小葉癌転移

0

0

0

0.00

星細胞腫

4

0

0

12.12

上皮小体、腺腫

5

0

0

23.81

上皮小体、正常組織

0

3

0

37.50

唾液腺、腺リンパ腫

3

21

0

72.73

唾液腺、腺腫

1

0

0

12.50

唾液腺、正常組織

3

0

0

37.50

精巣、正常組織

0

0

0

0.00

甲状腺、濾胞癌

8

2

0

31.25

出典:Gelmann EP, et al. Expression of NKX3.1 in normal and malignant tissues. Prostate 2003;55:111-7.

 

121217_003121217_002

(自験例(前立腺癌精嚢浸潤)。左:H&E染色、右:PSA染色)

 

(注)血清PSA値が高値で、その原因となりうる病変が臨床的にそこしかなければ、病変においてPSA染色陽性となるかもしれないが、逆に、病変でPSA染色陽性であっても、それがすなわち血清PSA値高値ではない。PSA染色はあくまで定性検査である。

 

 

執筆日:2012/12/17

執筆者:神戸大学医学部附属病院病理診断科 酒井康裕、柳田絵美衣、今川奈央子

ページの先頭へ