悪性リンパ腫診断に必要な抗体
*どこまで診断するか、リンパ腫症例がどのくらいあるかなど、様々な因子で内容は異なってきます。 下記はあくまでも、参考にして下さい。
自施設に備えておくべきと考える抗体
L26:優秀なB細胞マーカー。基本中の基本です。
CD79a:L26よりも高価だが、より染色範囲が広く、B-lymphoblastic lymphomaや形質細胞への分化もカバーする。
CD5:mantle cell lymphoma、B-CLL/SLLなどのスクリーニングに。
CD10:瀘胞リンパ腫など。近年ではdiffuse large B-cell lymphomaの細分類にも有用。
CD23:B-CLL/SLLの診断
Cyclin D1:mantle cell lymphomaの診断に必須
bcl-2:瀘胞リンパ腫の診断。
Kappa&kambda:リンパ腫か否かの補助的診断。形質細胞腫。
MIB-1:Burkitt lymphomaか否か。頻度としては少ないが、緊急を用する。また、他分野でも有用なので揃えておくべきでしょう。正常の胚中心でみられる極性が瀘胞リンパ腫で消失することを利用することもできる。
CD3:T細胞マーカーとして、リンパ腫診断の基礎となる。UCHL-1は廃止しましょう。
CD43:B細胞におけるaberrant expressionを用いて、B細胞リンパ腫の診断の補助に。T細胞マーカーとしては用いない。
CD56:NKマーカー。nasal/nasal-type T/NK cell lymphomaはもちろんのこと、T細胞リンパ腫では常に染色すべき。
EB-virus:高価ですので外注でも良いでしょう。手技は簡単なので、自前で行えればbetterです。意外と使用頻度は高いと思います。
CD15:Hodgkinリンパ腫。
CD30:Hodgkinリンパ腫、anaplastic large cell lymphomaなど。
EMA:anaplastic large cell lymphomaなど。
TdT:頻度は少ないが、lymphoblastic lymphomaは緊急性があります。胸腺腫vs胸腺癌の鑑別にも用いることができます。
myeloperoxidase: granulocytic sarcomaや、leukemiaの浸潤などで有用です。
Optionalと考える抗体
ALK-1:anaplastic large cell lymphomaでは必ず染色する必要がありますが外注でもかまわないかもしれません。
CD45RO(UCHL-1):特異性に問題があり、近年はほとんど使いません。
CD4:勿論、T細胞リンパ腫の診断に有用ではありますが、必須では無いでしょう。
CD8:勿論、T細胞リンパ腫の診断に有用ではありますが、必須では無いでしょう。
CD7:CD7のlossを用いてT細胞性リンパ腫診断の補助に。例外に注意。
CD21:リンパ瀘胞の構築をみるのに有用ですが、必須では無いでしょう。
CD25:ATLの診断などに有用です。多い地域では必須でしょう。
CD35:FDC sarcomaなどに有用ですが稀ですからね。
CD138:形質細胞。あれば便利ですが・・・
surface CD3:NK cell lymphomaの診断(NKでは陰性)。CD56で通常は診断してしまいます。
Oct2, Bob1:新しいB細胞性マーカー。非常に有用ではありますが、用いる機会は少ない。
FDC:FDC sarcomaなどに有用ですが稀です。
TCRαβ, TCRδγ:いずれも使うことは稀。
TIA-1, granzyme B, perforin:cytotoxic marker。重要ですが、稀と言えば稀。
MUM1, bcl-6:前者はactivated B、後者はfollicular center BのマーカーとしてDLBLの細分類に。これからは必須になるかも知れません。
Ig類:なくても概ね診断には問題はありません。
執筆日:2006.1.17→1/25小修正
執筆者:神戸大学病院病理部病理診断科 伊藤 智雄 tomitoh@med.kobe-u.ac.jp