免疫組織データベース~いむーの



S100A7

2012年11月19日

(Psoriasin)

 

Mouse monoclonal antibody

メーカー:Novocastra

クローン:3DC

希釈倍率:1:50

抗原賦活化:CC1 (Ventana)

推奨陽性コントロール:扁平上皮

染色パターン:細胞質

(上記は神戸大病理部での条件(Ventana Benchmark XT)。抗体は必ずしも全てのメーカーを比較して選択しているわけではありませんので、必ずしも“推奨メーカー”という意味ではありません。)

 

S100A7は11.7kDaのカルシウム結合蛋白で、正常なヒト表皮(特に顔、頭皮および皮脂腺)で棘細胞の細胞質に分布し、最終分化した棘細胞の細胞周辺部に存在している。体の表面で大腸菌に対する局部防御の要である。乾癬の皮膚に過剰発現している分泌タンパク質として、最初に同定されたが、アトピー性皮膚炎、菌状息肉腫、ダリエ病、炎症性硬化性萎縮性苔癬などの多くの皮膚炎症性疾患においてもその過剰発現が観察されている。また、皮膚の有棘細胞癌でも過剰発現しており、膀胱癌、乳癌、肺癌、喉頭癌、骨肉腫等でも注目されている。下は扁桃。

 

用途:扁平上皮癌マーカーとして利用できる。

表1-1 S100A7の肺組織におけるmRNAと蛋白発現

症例数

mRNA発現

蛋白発現

非癌性肺組織

60

0

0

扁平上皮癌

35

21

18

  I/II

18

11

9

  III/IV

17

10

9

腺癌

18

0

0

  I/II

10

0

0

  III/IV

8

0

0

腺扁平上皮癌

5

2

2

  I/II

3

1

1

  III/IV

2

1

1

大細胞癌

2

1

1

  I/II

1

0

0

  III/IV

1

0

0

表1-2 肺組織におけるS100A7免疫染色の結果

症例数

免染陽性数

扁平上皮癌

62

33

  I/II

38

21

  III/IV

23

12

  不明

1

0

腺癌

45

0

  I/II

26

0

  III/IV

19

0

腺扁平上皮癌

9

3

  I/II

3

1

  III/IV

2

1

  不明

4

1

大細胞癌

5

1

  I/II

2

0

  III/IV

2

1

  不明

1

0

小細胞癌

11

0

  III/IV

11

0

他の肺癌

13

0

  I/II

8

0

  不明

5

0

正常肺

21

0

良性肺疾患

6

0

出典:Zhang H, et al. Selective expression of S100A7 in lung squamous cell carcinomas and large cell carcinomas but not in adenocarcinomas and small cell carcinomas. Thorax 2008; 63: 352-9.

表2 扁平上皮癌陽性マーカーの感度・特異度とROC解析

抗体

全分化度

低分化型のみ

感度(%)

特異度(%)

AUC

感度(%)

特異度(%)

AUC

高分子サイトケラチン

97.3

33.3

0.653

100

36.8

0.684

サイトケラチン5/6

93.3

98

0.96

87

98.3

0.926

p63

98.7

51.6

0.751

97.8

48.3

0.731

トロンボモジュリン

79.3

79.9

0.796

58.7

72.4

0.656

デスモコリン-3

72.7

100

0.863

52.2

100

0.761

グリピカン-3

46.3

92.4

0.695

45.7

94.8

0.702

S100A2

63.3

64.6

0.639

50

81

0.655

S100A7

70.7

86.8

0.787

45.7

75.9

0.608

Sox2

80

95.5

0.878

71.7

94.8

0.833

(但し、S100A7は、IMGENEX, clone 47C1068, 1:200, Citrate)

出典:Tsuta K, et al. Utility of 10 immunohistochemical markers including novel markers (Desmocollin-3, Glypican 3, S100A2, S100A7, and Sox-2) for differential diagnosis od squamous cell carcinoma from adenocarcinoma ofb the lung. J Thorac Oncol 2011;6:1190-9.

 

非小細胞肺癌152例を用いた我々の検討では、

陽性

陰性

扁平上皮癌

38

4

42

非扁平上皮癌

38

72

110

76

76

152

(P<0.01) 肺扁平上皮癌に対し、単純には、感度90%、特異度65%、陽性適中度50%、陰性適中度95%。 強から中等度陽性像をもって陽性と扱うと(ROC解析でAUC0.70)、感度45%、特異度95%、陽性適中度79%、陰性適中度82%。 小検体における非小細胞肺癌において、扁平上皮癌マーカーとして利用するには、CK5/6やp40、Desmoglein-3などには劣る。

S100A7-SQ2.jpgS100A7-AD1.jpg

(自験例。左は肺扁平上皮癌、右は肺腺癌。)

 

執筆日:2012/11/19

執筆者:神戸大学医学部附属病院病理診断科 酒井康裕

 

 

運営:いむーのワーキンググループ 代表 伊藤 智雄 (神戸大学病院病理部)

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